「脱炭素社会」実現に日本政府動き出す 再生エネルギーはコストと産業育成で課題も
原発再稼働推進
再生可能エネルギーを推進する欧州連合(EU)では、天候による発電出力の変動対策として国際送電網を活用して電力の輸入・輸出を積極的に行っている。一方、こうした送電網がない日本において政府は、電力の安定供給のためにも「原発再稼働」は不可欠と位置付けている。
菅義偉首相は26日の所信表明演説の中で「安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給を確立する」と明言。梶山弘志経済産業相も同日の会見で、原発を含めてすべての電源を活用していくとし「10年間は原発再稼働の努力期間」と述べた。安全対策の不備や地元の理解などハードルが高い状況も続いているが、ゼロエミッション実現に向けては、避けて通れない議論となってくる。
こうした中、自然エネルギー財団は「脱炭素化を原子力発電の継続の根拠にしようとする議論があるが、高コスト化し、安全性の確保や最終廃棄物処理に課題を抱えた原子力発電に依存することはできない」とくぎを刺す。
先んじる企業
政府に先んじて複数の企業がすでに、国際社会やビジネス上不可欠として独自のゼロエミッションを打ち出している。これまで鉄鋼連盟で共通の目標を掲げていたJFEホールディングス<5411.T>は、自社でのCO2排出削減目標を初めて設定した。鉄鋼事業において30年度のCO2排出量を13年度比で20%以上削減することを目指すほか、50年以降のできるだけ早い時期に、JFEグループのカーボンニュートラルを実現する。
同社の手塚宏之専門主監(地球環境)は「投資家からの問い合わせが多いことなどを受け必要だと踏み切った」と話す。低品位の石炭・鉄鉱石から製造される原料を使用する技術など、これから開発が必要な技術も整理し、ロードマップを明確にした。
東京電力ホールディングス<9501.T>と中部電力<9502.T>が折半出資するJERA(東京都中央区)も、50年に事業活動におけるCO2排出量を実質ゼロにする目標を発表した。火力発電所の燃料を水素などに転換するほか、非効率な石炭火力を廃止する。
JERAの奥田久栄常務は「エネルギー事業者であり続けるための必要条件であり、世界で活動するための入場券のようなもの」と、計画発表の意味を説明する。今後、CO2の排出量が少ない電気を求めるニーズも確実に高まってくるとみられ、国がCO2排出の少ない電気を市場でしっかり評価する仕組みを導入すれば「ビジネスベースで十分競争力のある電気になる」と期待を示している。
梶山経産相は「2050年はまだ想像できない」と話し、今後の技術開発の加速に期待を寄せる。国としては、税制などあらゆる支援を行っていく方針だ。
(清水律子 編集:田中志保)
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