コロナ禍で苦境に立つ日本の航空会社 政府は側面支援、直接救済にはなお距離
新型コロナウイルスの世界的流行で旅客需要が大きく落ち込む中、各国政府が航空会社の救済に乗り出している。大手2社が経営悪化に直面する日本も、政府が空港使用料減額による負担軽減策を打ち出し、与党内には追加措置を求める声がある。写真は10月23日、東京の羽田空港で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
新型コロナウイルスの世界的流行で旅客需要が大きく落ち込む中、各国政府が航空会社の救済に乗り出している。大手2社が経営悪化に直面する日本も、政府が空港使用料減額による負担軽減策を打ち出し、与党内には追加措置を求める声がある。
それでも、日本国内は少しずつ人の移動が再開しつつあるほか、金融機関が資金面で支えられる状況にあり、欧州のように国による資本注入にまで踏み込むムードはまだない。ルフトハンザの直接救済に踏み切ったドイツ政府など、欧州並みの対応までは今のところ距離がありそうだ。
税優遇など追加支援の声
「過去に例のない減額幅となります」。航空会社が支払う空港使用料の軽減策をまとめた国交省の幹部は10月初旬、与党関係者にこう説明に回った。
国交省によると、2020年度の空港使用料を年間2500億円程度と想定。このうち着陸、停留時の費用や保安料で880億円、管制サービスなどに支払う航行援助施設利用料で1600億円の徴収を見込んでいた。今回は着陸・停留料に絞って徴収率を45%の減額とする措置を講じ、最大125億円の支援策とした。
今年に入って新型コロナの感染が拡大して以降、航空業界は利用者が激減し、4─6月期はANAホールディングスが1088億円、JALが937億円の最終赤字に転落した。
複数の関係者によると、このうち最大手のANAは傘下の全日本空輸が路線の見直しを検討。国内線を羽田と伊丹発着の路線を中心に集約し、地方発着路線を縮小する可能性がある。国際線も羽田発着を優先し、関西、中部、成田の各空港は発着便の多くを当面休止する。
自民・公明の与党関係者の間では「航空インフラは何としても守らなければならない」との声が多い。残る費用負担の減免や税優遇についても検討を求める声が強まりそうで、ある閣僚経験者はANAを念頭に、「コロナという、自らの責めに帰さない事由によって厳しい状況になるのであれば当然、追加支援が必要になる」と断言する。
業界団体の定期航空協会は今春、政府との会合で支援を要望。空港使用料の減額のほか、航行援助施設利用料の支払い免除、航空機の固定資産税や燃料税の支払い猶予など、公的な負担金軽減策を求めていた。
別の自民党中堅議員は「『経営努力で乗り切って』と言うにも限界がある現状で、手付かずの負担金軽減や税優遇を年末にかけ働きかけたい」と話す。