コロナ禍で苦境に立つ日本の航空会社 政府は側面支援、直接救済にはなお距離
資本注入は「最後の砦」
航空会社の政府支援を巡っては、欧州が先行し、より直接的な措置に乗り出している、ルフトハンザが90億ユーロ(約1兆1000億円)の政府救済案を受け入れたほか、同様に苦境に立つイタリア航空大手アリタリアは6月に完全国有化された。エールフランスKLM傘下のエールフランス、KLMはともにフランス、オランダ両政府の金融支援を受けた。
日本の政府や与党内では、そこまでの声はまだ聞かれない。国境をまたいだフライトが多い欧州の航空会社と違い、日本は国内線も主軸。政府の観光支援策「GoToトラベル」などで人の移動が再開し、ANA、JALとも国内線は復調の兆しがみられる。GoToトラベルは来年1月末で終了する予定だが、年内にまとめる経済対策で延長措置される可能性がある。
また、金融機関が健全性を維持しており、航空会社を支えるだけの体力がある。ANAは今月27日、事業構造改革とともに主力の三井住友銀行など5行から劣後ローンで4000億円を調達することを発表する見通しだ。
「株価が戻り歩調となり、幸いにも金融機関が保有する株式の減損処理に追われるなどの事態に至っていない」と、前出の閣僚経験者は言う。政府による航空会社への直接的な資本注入は「金融機関の体力があるうちは必要ないのでは」と指摘する。
しかし、コロナ禍がどこまで長引くかは分からない。日本政府はアジアを中心に徐々に外国との往来制限を緩和しつつあるが、欧米は感染症の流行が収まる気配がなく、国際線の本格的な再開はめどが立たない。
与党内からは「今は会社が矢面に立ってやっているが、コロナの影響が来春まで続くようだと深刻度が増す」(前出の中堅議員)との声が聞かれる。それでも、今のところは「直接注入は『最後の砦』」と、航空業界に精通する与党議員は言う。
「『自助、共助』で需要の回復を待ちながら、欧米よりは影響の小さいアジアの需要をどう取り込むかや新規事業などの中期的戦略を描く選択肢もあるのではないか」と、別の与党関係者は言う。
(杉山健太郎、梶本哲史、竹本能文、中川泉 編集:山口貴也、久保信博)
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