最新記事

ビジネス

奇抜な名前の高級食パン店を大ヒットさせたプロデューサー、そのノウハウを明かす

2020年7月13日(月)11時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

岸本氏は、2013年の大槌町での経験から常に一貫して「老若男女に愛される」「街を元気にする」パン屋を作ろうとしている。そのため、世代や嗜好に関係なく食べてもらえる食パンを販売しているのだ。

kangaetahito20200703-5.jpg

岸本氏がプロデュースした高級食パン店のひとつ(『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』口絵より)

このように、自分のこれまでの経験から作りたい店や扱う商品の「コンセプト」と「ターゲット」を明確にしておくことが、何より大切だと岸本氏は言う。

日本の企業でありがちなのが、データに頼りすぎて失敗してしまうこと。確かにデータは大切だ。店の立地や客層など、データを常に気にしておくことは基本中の基本。ただ、それだけでは「売れる商品」にはならない。

ヒットさせるには、その店や商品ならではの個性と付加価値が必要なのだ。その個性や付加価値を生み出すためには、お客さんを迎え入れる店(経営者)の側も、身をもって楽しい体験を積み重ね、自分の中に「幅」を持つことが不可欠になると岸本氏は言う。それがその人の「感性」になる。

また、逆に「感性」だけに頼って失敗しているケースも多い。優れた感性を持った人でも、それを多くの人に喜んでもらえる形に落とし込むにはデータが必要だ。もし奇跡的に感性だけでヒットしたとしても、データなくしてその人気を長く持続するのはかなりの強運がなければ厳しいだろう。

とはいえ、大衆に受け入れられようと「データ」に合わせてしまったら、「感性」は死んでしまうのでは? そんな疑問を持つ人もいるかもしれない。

そのバランスを取り、データを踏まえつつ感性を活かしたビジネスにするために必要なのが、「人生の棚卸し」で見つけた「コンセプト」と「ターゲット」である。その軸さえあれば、データに振り回されることなく、自分だけの感性を表現するのに必要な形が見えてくるはずだと、岸本氏は断言する。

kangaetahito20200703-6.jpg

岸本氏がプロデュースした高級食パン店のひとつ(『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』口絵より)

例えば、岸本氏のブランディングの特徴として、すべてに共通しているのが「わかりやすさ」である。奇抜に見えても、ビジネスのターゲットが老若男女問わず、すべての人であるため、店名に小学生が読めないような難しい漢字や外国語は使用していない。

目立つ、今っぽい、オシャレと言った表面的な考え方ではなく、自分の志から導き出されるセオリーが必要なのだ。それがないと、流行に乗っただけの店になるか、奇抜なだけの近寄りがたい店になり、一貫したブランドとしての魅力を持つことができないという。

インパクトがある店名は、「岸本流」ブランディング術、マーケティング術、プロモーション術のごく一部に過ぎない。岸本氏のビジネスノウハウが詰まった本書は、自分にとって仕事とは何か、そして、自分の仕事で生み出すことができる最大の価値は何かまでをも考えさせられる一冊だ。


「考えた人すごいわ」を考えたすごい人
 岸本拓也 著
 CCCメディアハウス

※セブンネット限定特典付き『「考えた人すごいわ」を考えたすごい人』のページはこちら

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中