新型コロナが促す「自動車通勤」 新車販売につながるかは不透明
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新型コロナウイルス禍を背景に、ペーパードライバーを「卒業」しようとする人が増えている。写真は都内にある自動車会社のショールーム。2016年2月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)
新型コロナウイルス禍を背景に、ペーパードライバーを「卒業」しようとする人が増えている。人との接触が多い電車などに比べ感染リスクが低いとして車通勤を推奨する企業もあり、マイカーの価値も見直されている。自動車利用では新車購入以外にもシェアリングやリースなど複数の選択肢があり、潜在需要が新車販売の回復につながるかは不透明だ。
車移動を再評価する機運
埼玉県在住で医療機器メーカーに勤める川又亮太さん(32)はコロナを機に脱ペーパードライバーを果たした1人だ。10年以上前に免許を取得したものの、もともと運転に苦手意識があった上、日常生活では運転しなくても不便はなかった。
だが、5月の大型連休後から会社が契約したレンタカーで車通勤を始めた。会社が感染予防のため電車通勤からの切り替えを指示したためだ。ペーパードライバー専門の出張教習を受講し、今では便利さを実感しており「今後はマイカーを買いたい」と話す。
コロナを背景とした脱ペーパードライバーは首都圏で増えている。1都3県でペーパードライバー専門の出張教習を行うサワムラガク東京(東京・練馬区)の代表社員、沢村秋岳氏は「4月の緊急事態宣言後から、コロナ関連での受講者は増えている」と語る。
例えば、ある医療従事者はコロナ患者を受け入れている病院に勤めており、他人への感染リスクがある公共交通機関から車での移動に切り替えた。テレワークの普及で交通の便が良い首都圏から車移動が中心の地方へ移住を決めた会社員もいる。
警察庁によると、昨年の運転免許保持者は約8200万人。このうち5年間無事故・無違反の優良運転者(ゴールド免許証)の更新は近年56%超で推移しており、沢村氏は優良運転者の約60%がペーパードライバーとみている。
自動車の利用拡大は駐車スペースの稼働状況からもうかがえる。駐車場予約アプリを運営するakippa(大阪市)によると、緊急事態宣言発令から1週間(4月7日―13日)のアプリ経由での通勤・通学目的の利用は、コロナ流行前(2月4日ー10日)に比べ東京都で2.3倍に増加。宣言解除後(5月26日―6月1日)も全国で2倍、東京都は約4倍、都内有数のビジネス街がある千代田・港・中央の3区では平均で約5倍になった。同社広報は「宣言解除後も車通勤を続けている人や始めた人が多い」と話す。