最新記事

新しい生活様式

新型コロナが促す「自動車通勤」 新車販売につながるかは不透明

2020年6月9日(火)17時15分

カーシェアは「不安」、購入は「家計に負担」

国内新車販売は1990年(約777万台)のピーク以降、少子高齢化などを背景に減少、昨年は519万台まで落ち込んだ。コロナを機にマイカーに安心を求める潜在需要への自動車業界の期待は大きい。

ホンダの八郷隆弘社長は5月の決算会見で、コロナ後は密になりがちな都市への集中より「分散型コミュニティー」が増えるとの見方を示した。「よりパーソナルで手にしやすく使いやすい車(の利用)が伸びる」とみており、品ぞろえやサービス展開に生かす意向だ。

もっとも、SBI証券企業調査部長の遠藤功治氏は「コロナ需要」が新車購入に直結するとの見方には慎重だ。近年、新車需要を奪うとされてきたカーシェアの成長にも「ブレーキがかかる」とみる。景気動向が不透明な中、月額制で頭金・税金・車検など多額の支払いが一度に生じない個人向けリースやサブスクリプションサービスが伸びるとみている。

消費者も複数ある車利用の選択肢の間で揺れているようだ。あるカーシェアサービス会員で東京都在住の女性会社員(44)は「今は誰がどこを触ったか分からないカーシェアの車両に不安がある」と話す。

国内最大手タイムズ・カーシェアの広報は「不特定多数の人が短期間・短時間利用するカーシェアを不安に思う人がいる一方、電車から車へと通勤手段を変更し、利用し始めた人もいる。影響はプラスマイナスある」と話す。カーシェア各社は10日に1回程度の車両巡回時に、ハンドルなど利用者が触れる部分を中心に「消毒」するなどの対策を講じているという。

新車購入は家計への負担が重い上、リモートでの仕事が増えれば移動のニーズも減る。先の女性は「できればマイカーが欲しい」と話すが、駐車場代や維持費の負担が重く「購入の決心もつかない」。電車から会社支給のレンタカーでの通勤に切り替えた東京都在住の会社員、甲斐圭祐さん(25)も車の便利さを感じてはいるが、「生活を切り詰めてまで購入するのには躊躇(ちゅうちょ)する」という。

一方、ネットで申し込む個人向けリース「定額カルモくん」の申込者数は2月以降伸びており、宣言解除後(5月25日―6月1日)も4月(16日―23日)に比べ7.4%増えているという。サイトを運営するナイル(東京・品川)の広報は「長期化するコロナ禍で今後も増える」とみている。

首都圏のトヨタ自動車販売店の営業担当者は、今のところコロナを理由にした新規購入はないと話す。ただ、運転人口が減る中、「コロナを機に運転する人が増えてくれればありがたい」と話している。

(白木真紀  編集:平田紀之)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・東京都「東京アラート」発動、レインボーブリッジ赤く染まる 新型コロナ新規感染34人で
・検証:日本モデル 西浦×國井 対談「日本のコロナ対策は過剰だったのか」
・なぜブラジルは「新型コロナ感染大国」へ転落したのか
・WHOに絶縁状、トランプの短気が招く「世界公衆衛生危機」の悪夢


20200609issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中