新型コロナウイルスがあぶり出した「中国依存」 国内回帰阻む少子高齢化の呪縛
新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車をはじめとするサプライチェーンからマスク、消毒液といった衛生製品に至るまで、日本企業の中国依存の深さをあぶり出した。写真は都内で4月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車をはじめとするサプライチェーンからマスク、消毒液といった衛生製品に至るまで、日本企業の中国依存の深さをあぶり出した。中国の生産・輸出停止の影響は大きく、政府は緊急経済対策で、生産の国内回帰等を支援する予算措置を講じたが、そうした動きは現時点で一部にとどまっている。自動車や電機など、日本企業の生産体制を変えていくにはいくつかの障害も見えてきた。
必要な医療資材も中国依存
新型コロナの感染が拡大するなか、マスク、消毒液、医療用防護ガウン、人工呼吸器と、次々に必要な物資の不足に見舞われた。
8割を中国からの輸入に頼っていたマスク。国産を増やそうとしても、マスクに使用するゴムや不織布は、中国からの輸入が多くを占めていた。消毒液は国産で十分増産できると見られていたが、プッシュ式のボトルは中国からの輸入に頼っていた。
日本の輸入全体に占める中国の割合は、2000年の14.5%から2019年には23.5%に高まっている。中間財の輸入に占める中国の割合をみても、米国の16.3%、カナダの9.2%を引き離し、先進国のなかでは、日本が21.1%と最も高い。
「強靱な経済構造を構築する観点から、必要とされる製品や部材、素材については、単なる価格競争だけで左右されない、安定的な供給体制を整備することが必要」(梶山弘志経済産業相)との認識から、政府は、緊急経済対策で生産拠点の国内回帰やASEAN諸国への多元化を打ち出し、4月30日に成立した2020年度補正予算に2486億円を盛り込んだ。生産拠点を国内に回帰させる場合、中小企業は費用の3分の2、大企業にも2分の1を補助する。
この制度を活用し、生産拠点を日本に設ける動きも出てきた。アイリスオーヤマ(仙台市)は、投資総額30億円で、6月に稼働予定の宮城県角田工場のマスクの生産能力を当初計画の月6000万枚から月1億5000万枚に増強する。また、マスクで使用する不織布についても、中国からの供給に頼らず、同工場内に資材設備を導入し、内製化率を高める。
業界関係者によると、マスクに関しては、世界中で需要が高まり、中国の不織布の価格が高騰するなど、コスト面からも国内製造に向かいやすい環境になっている。また、マスクの製造ラインは複雑なものではなく、クリーンルームなど衛生的な環境があれば、比較的容易に製造が可能だという。