テレワークに落とし穴 金融相場変動を助長、銀行や証券がリスク取れず
「カウンター」弱まる
銀行や証券にはプライスが下がりすぎ、もしくは上がりすぎた場合に、逆張りでリスクを取りにいく、マーケットメイクの役割がある。
「ファンドのように解約による資金流出を警戒する必要がなく、自己の判断で機動的にリスクを取りにいける」(外資系証券)ことから、恐怖感が支配する下落相場でも、下値で買いに動くことで、結果的にマーケットに安定をもたらしてきた。
今回、コロナショックが広がる中で、株価が1000円幅で動くような大幅な変動が繰り返される背景には、日経平均などのインデックス(指数)の動きと連動させるように運用を行うパッシブ型ファンドの存在があるとみられている。
パッシブ型ファンドの戦略は、インデックスが上昇すれば買い、下がれば売る「順張り」だ。運用が複雑でないことから、手数料が安く、個人や年金の資金が流れ込み市場が急拡大している。「今回も順張り的な資金の流出入がみられ、それが相場の急変動を加速させた」と、野村証券のクロスアセット・ストラテジスト、高田将成氏はみる。
一方、銀行や証券は、リーマン・ショック以降の規制強化で、レバレッジ(てこ)をかけにくくなってしまったことに加え、今回のオフィス分離や在宅勤務の広がりで、さらにリスク許容量が低下している。市場の「カウンター」機能の低下が相場変動を大きくしている可能性は大きい。
東京封鎖ならさらに相場は触れやすく
仮に東京が都市封鎖(ロックダウン)されても、米国のニューヨークなどと同様、金融システム自体は維持されるとみられている。取引所を閉鎖して、売買の機会を奪うことは、不安を増幅させ、悪影響の方が大きくなるからだ。
日本では欧米のように強制力をもったロックダウンは法律上できない。西村康稔経済再生相は31日の経済財政諮問会議後の記者会見で、新型コロナウイルス特措法で想定されている緊急事態宣言は、欧米のロックダウンと異なり、強制力を持たず罰則があるわけではないと説明した。
ただ、ロックダウンが実施されれば、今以上に市場関係者の在宅勤務が増える可能性は大きい。そうなれば流動性やリスクテーク能力は一段と落ちる。
JPモルガン証券は31日付のリポートで、東京都がロックダウンに踏み切った場合、世界の金融市場と同様、金融セクターで在宅勤務が増加し、取引量の減少ならびに流動性が低下する恐れがあると指摘。名目実効レートベースでは円高方向で反応するとの見通しを示した。
今回のコロナショックを奇貨として、5Gなど情報技術を通じた在宅勤務の環境整備が進むことになりそうだ。実際、株式市場では早くも関連銘柄が物色され始めている。しかし、それにはまだ時間がかかる。振れやすい相場はもうしばらく続く可能性が大きい。
[東京 1日 ロイター]
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