新型コロナウイルスが蝕む孫正義の夢 10兆円の巨大投資ファンド、投資先の大半に問題抱える
低迷する株価、相次ぐIPO延期
米ウーバー・テクノロジーズは3月、新型コロナ危機を乗り切る資金が十分にあると表明した。ただ、株価は2019年の上場時の公開価格を40%下回っている。
東南アジアのグラブは、料理宅配サービスは好調だとしている。中国の滴滴出行(ディディ・チューシン)はコメントを控えた。
ソフトバンクGはビジョン・ファンドと別に、ウィーワークや衛星通信のワンウェブなどに直接投資も行っている。ワンウェブは3月に破産法適用を申請した。
前出の関係筋によると、ソフトバンクGが出資する新興企業のうち、オンラインストア構築サービスのビッグコマースなど少なくとも6社は、IPO計画を2021年に延期した。
別の関係筋によると、ビジョン・ファンドが出資し、今年IPO申請書類を非公開で提出した米料理宅配スタートアップのドアダッシュも、資本市場の不安定な動向を踏まえて計画を見直しているという。
ドアダッシュはコメントを控えた。ビッグコマースはコメントの要請に返答していない。
ビジョン・ファンドは、出資を受けたサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)やアラブ首長国連邦(UAE)のムバダラに配当を支払っており、投資先企業のIPOは重要な資金調達手段だ。
関係筋によると、PIFとムバダラはここ数週間に、ビジョン・ファンドのパフォーマンスや配当支払い能力に懸念を示したという。
ムバダラの広報担当者は取材に対し「厳しい経済状況の中、われわれは長期的視野を持つパートナーとしてファンドのパフォーマンスを最適にする方法についてソフトバンクGと話し合っている」と述べた。
PIFはコメントを控えた。
一部の投資には明るい材料も
新型コロナを受けた移動制限により消費者が自宅で過ごすことを余儀なくされたことで、ソフトバンクGのポートフォリオには明るい材料を提供している企業もある。中国の動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)の利用が拡大し、運営会社の北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)は年末までに従業員を倍近くに増やす方針を示した。
韓国の電子商取引企業クーパンは受注が急増。中国のオンライン医療サービス会社、平安健康医療科技<1833.HK>はオンライン相談の需要増加を背景に株価が年初の水準から倍に上昇した。
スタートアップ企業が不況を乗り切るのに十分な資金を有していれば、景気回復につながると専門家は指摘する。
ただ、明るい材料を提供する企業は少ない。
インドの新興ホテルチェーン、OYO(オヨ)・ホテルズ・アンド・ホームズは、利益を生み出す前に巨額の資金を投じて急速に事業を拡大させる孫氏のアプローチの典型的な例となった。移動制限が導入されて以降、世界の旅行業界は突如として危機に陥った。
関係筋によると、オヨは不可抗力事態が発生したとし、ビジネスモデルの柱だった売上保証を撤回。人員を調整し、事業拡大ペースを抑制している。
オヨはコメントを控えた。