中国頼みの世界の製造業、新型ウイルスで物流ストップしお手上げ状態
輸送不能
たとえ工場が十分な人員を確保しても、部品仕入れや完成品出荷の輸送手段がないというのが大きな頭痛の種だ。
山東省にある製鉄所の幹部は「自動車による輸送再開は遅々としており、生産を抑制している」と語り、ドライバー不足や幾つもの検問所の存在が陸上運送を妨げていると説明した。
中国各地の港湾でも人手が足りず、コンテナ需要が減っているため今後数か月、海運の面でも製品出荷に遅れが生じる公算が大きい。さらにルフトハンザなど一部航空会社は、乗務員の健康への配慮や需要動向の不透明さを理由に、航空貨物サービスを縮小している。
フェデックス・エクスプレス・アジア・パシフィックのカレン・レディントン社長は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行時よりも新型ウイルスによる危機の方が、ずっと逆風が強いと指摘。「中国は当時よりもはるかに世界とつながっている。中国が世界経済の大きな部分を占めているという事実こそが、影響度は今回の方が格段に大きいことの理由に思われる」と付け加えた。
広東省でスマートフォン向けアクセサリーを製造するフランス企業のビッグベン・インタラクティブのゼネラルマネジャー、マシュー・モンテロン氏は、足元の混乱について、複雑に絡み合うサプライチェーンの実態を浮き彫りにしているとみている。
たとえどこかの工場が再開できて注文を受けられる態勢にあっても、その下請け業者がその地域の当局者との間で問題を抱えているかもしれず、そうなると下請け業者たちが操業できないか、労働者確保ができないという。同氏によると、ビッグベンは対策として、新型ウイルス問題の影響が小さい国で製造する品物の出荷を増やす方向にかじを切っている。
もっと思い切って、生産拠点全般を中国から別の場所に移そうと検討する企業もある。東莞市の工場を経営するアンジョラン氏は、米国の顧客向けにメキシコに2番目の組立工場を設置することを考えていると打ち明け、「中国はリスクの主な発生源とみなされつつある」と述べた。
(Josh Horwitz記者、Chayut Setboonsarng記者)
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