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温暖化対策

温暖化阻止の取り組みは肉食メニュー排除で? ダボス会議に問われる本気度

2020年1月25日(土)11時31分

ビーガン料理人のマクニッシュ氏は、ダボス会議で料理を担当するよう招請されたとき、驚きはしたものの、即座に承諾のサインをした。同氏はダボス会議に集まる各国首脳、政治家、CEO、有識者、著名人の一部のために、ビーガン/ベジタリアン料理を用意するシェフたちの1人。写真は会場で撮影(2020年 ロイター/Denis Balibouse)

カナダ人のビーガン(完全菜食主義)料理人ダグ・マクニッシュ氏は、スイス・アルプスに世界の要人が集まる年1回のダボス会議で料理を担当するよう招請されたとき、驚きはしたものの、即座に承諾のサインをした。

37歳のマクニッシュ氏は、世界経済フォーラム(WEF)がダボスで開催する第50回年次総会に集まる約3000人の各国首脳、政治家、CEO、有識者、著名人の一部のために、ビーガン/ベジタリアン料理を用意するシェフたちの1人である。

ゼーホフ・ホテルのキッチンで野菜を刻みながら、マクニッシュ氏は、いつも、もっと多くの人に肉食を止めるよう働きかけている、と語る。国連のデータによれば、農業・家畜は地球温暖化につながる温室効果ガス排出量全体の11%を占めているからだ。

気候変動がダボス会議における主要テーマになる中で、主催者らは、「Future Food Wednesday(将来の食を考える水曜日)」に向け、史上初めて、主要会場であるコングレスセンターにおけるメニューから肉・魚を排除し、地産地消への関心の高まりを受けて、バナナを禁止した。

マクニッシュ氏は21日、トムソン・ロイター財団に対し、「ここでの調理は私にとって、ビーガン食がどれほど素晴らしいものになりうるかをグローバルな規模で示すチャンスだ」と語った。このとき彼は、23日のディナーに向けて、テンペ(インドネシア発祥の大豆の発酵食品)のコロッケとビーガン風カマンベールフライの準備に取りかかっていた。

右前腕に「vegan(ビーガン)」という文字、左腕にはカラフルな果物・野菜を取り混ぜたタトゥーを入れたマクニッシュ氏が、食に関してどのような立場を取っているかはきわめて明快だ。

伝統的な修業を積んできたシェフであるマクニッシュ氏がビーガンになったのは15年前。それ以来、ビーガン料理書3冊のうち2冊が国際的な賞を獲得している。トロントでさまざまなレストランを経営しつつ、ビーガン食材をどのようにメニューに導入していくかアドバイスを提供している。

彼は、講演者をあちこちに移動させるためにホテルの外で待機する4輪駆動車や、多くの富豪がプライベートジェットで来場する現実を受け入れており、「変化には時間がかかる」と述べている。

「人々が料理を味わって、『これは驚いた、素晴らしい、これがビーガン料理だとは信じられない』と言ってくれれば、私にとっては、それが今週の成功だ」とマクニッシュ氏は言う。彼は『ミート・ユア・ミート(あなたが食べる肉はこうして作られる)』と題する工場的畜産に関するドキュメンタリーを観て、動物性食品を使わなくなった。

「ビルケンシュトックばかり履くヒッピーにならず、贅沢な生活を送りつつ、それでも動物性食品を口にしないことはできる」

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