年金制度改革、将来不安は解消遠く 変わらぬ高齢者偏重
<本丸の給付抑制策、経済情勢頼みに限界>
その一方で、政府の議論は、高額の年金をもらう高齢者への給付を抑制するところまでは踏み込んでいない。
現状の年金制度は、物価や賃金が上昇した際に給付の上昇分を抑制する「マクロスライド」を用いており、経済・物価上昇した際にまとめて減額することになっているが、物価や賃金が上がりにくい局面においては全く機能しない。
日本総研の西沢氏は「経済情勢に依存する制度では不安定。人為的に毎年抑制していくべき」と指摘。高齢者にとっても「物価が上がった時だけ年金が減額されるのは、逆に生活が苦しくなる」(ニッセイ基礎研究所・主任研究員の中嶋邦夫氏)との見方もあり、現役世代、高齢者のいずれにとっても好ましい政策とは言い難いものになっている。
パートも厚生年金加入へ、125万人担い手拡大狙う
現役世代に対しては、支え手となる厚生年金加入者を増やして保険料徴取を拡大する方針だ。
厚労省は、従来加入対象でなかった中小企業のパート労働者にも厚生年金の適用を拡大する方針で、厚生年金への加入者を「現状の4400万人から125万人程度の増加を目指す」(別の厚労省幹部)としている。今後、フリーワーカーや個人事業所の雇用者にも幅広く加入してもらうことを目指す議論も出ている。
ニッセイ基礎研の中嶋氏は「時短勤務で働く人にとっては、厚生年金加入により将来の受給額増のメリットがある」とみている。ただ、現役世代の中には「年金の支え手が増えても、将来の給付が確実に受け取れる安心感が持てない。保険料拡大を図りたい政府に都合の良い改正」(50代男性)との声もある。
今後、年金に続いて医療改革の議論も本格化する。しかし、厚労省の幹部の1人は「医療費削減も含め、今回論点に上がっている社会保障改革を全て実現できたとしても、40年後の給付金は改革前とそれほど変わりないとの試算がある」と本音を漏らす。
中嶋氏は「少子化を食い止めなければ、問題は抜本的には解決しない。政府はもう少しその点に力を入れるべき」と指摘している。「負担と給付の見直し」だけでなく、より長期的視点で少子化対策による世代構成のゆがみを是正すべく、根本的な取り組みが求められている。
(編集:田中志保)
[東京 22日 ロイター]


アマゾンに飛びます
11月26日号(11月19日発売)は「プラスチック・クライシス」特集。プラスチックごみは海に流出し、魚や海鳥を傷つけ、最後に人類自身と経済を蝕む。「冤罪説」を唱えるプラ業界、先進諸国のごみを拒否する東南アジア......。今すぐ私たちがすべきこととは。