サブスク化できないものはあるのか? 多方面に広がる定額使い放題の波、既存企業はどうすべきか
サブスク流行の背景には消費者の価値観変化が Tero Vesalainen-iStock
<消費者ニーズが「所有」から「利用」へと移ることによって拡大してきたサブスク市場。生き残りをかけた企業のとるべき対策とは>
広がるサブスクリプションサービス、モノだけでなくサービスも定額制
近年、消費市場では「所有から利用へ」という流れが加速している。これまでは所有することが常識だったモノでも、月額定額料金で使い放題になるサブスクリプションモデルが広がっている。あらためて市場を見渡すと、自動車や家具、家電製品、ファッション(スーツや普段着、バッグ、アクセサリー)、本・雑誌・漫画、ゲーム、音楽、映画・ドラマ・TV番組、おもちゃなど、生活に関わる商品の至るところにまで「サブスク」の波が押し寄せている。
また、モノだけでなくサービスにもサブスク化は広がっている。月額定額で美容院でシャンプーやブローし放題、カフェでコーヒー飲み放題、居酒屋でアルコール飲み放題、英会話レッスン受け放題、動画配信で予備校の講義聴き放題など、各領域でサブスク化が見られる。
なお、サブスクの多くは月額数千円以内で割安な印象が売りだ。しかし、月額数万円で高級腕時計やアクセサリー、高級レストランを利用し放題といった高級志向の消費者に向けたサービスもある。
また、サブスクは基本的にBtoCモデルだが、シェアリングエコノミーの登場によって、CtoBtoCモデルも浸透しつつある。事業者が提供するネット上のプラットフォームを利用すれば、個人間でモノやスペースなどの貸し借りも容易だ。例えば、高級ブランドバッグのサブスクを展開するラクサスでは、バッグを借りるだけでなく、貸すことで利用料が得られるサービスも提供している。
サブスクが多方面に広がる中で、既存のモノづくり企業が自らサブスクへ参入する動きもある。例えば、トヨタはカーシェアを、紳士服のアオキはビジネスウェアのレンタルサービスを始めている。
一方で、もし、サブスク化できないモノやサービスがあるとすれば、それは何だろうか。つまり、所有せずには使えないモノ、あるいは、定額制では提供できないサービスはあるのだろうか。実は、これは日ごろ消費者行動を分析している立場として、よく尋ねられる問いだ。消費生活においてサブスク化できないものはおおむね無いだろう、というのが私の意見だ。むしろ、既存企業が生き残るためにはサブスク(あるいはシェア)と上手く共存する必要がある。
それは、消費者の価値観が変化していること、そして、デジタル化が急速に進展しているためだ。