最新記事

ビジネス

サブスク化できないものはあるのか? 多方面に広がる定額使い放題の波、既存企業はどうすべきか

2019年11月15日(金)13時20分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

消費者の価値観変化、サブスクが好まれる理由

消費者の価値観変化については、主に3つの観点がある。1つ目は、幅広い消費者層において、消費行動の根底に「できるだけ安く済ませたい」という考えがあることだ。若者ほど経済不安が強く、目先の雇用や収入不安に加えて、少子高齢化による将来の社会保障不安も重くのしかかる。一方で、経済不安が比較的弱い層であっても、特に生活必需性が高いものについては、もし、新たに安くて便利なものが登場すれば、「できるだけ安く済ませたい」と考えるのは自然な心理だ。

2つ目は「所有するより利用したい」という価値観だ。安くて良いモノがあふれる中で育ってきたミレニアル世代を中心にモノの所有欲は弱まっている。良いモノ=高いモノというモノサシが変わり、今では高級車やブランド品を所有することが必ずしもステイタスではない。所有するよりも必要な時に必要な量だけ利用できれば良い、むしろその方が合理的でスマートだという考え方が広がっている。

3つ目は、2点目と重なる部分もあるが「無駄な消費をなくしたい」という考えだ。地球規模で環境問題が懸念される中、最近では、マーケティングでも「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標))」「サスティナブル」といったキーワードが目に付くようになった。大量にモノを買って廃棄するよりも必要な量だけ使う、あるいは再利用する方が好ましいという消費者の考えのもとで、大量生産・大量廃棄を想起させるような企業はイメージの低下を引き起こしかねない。

デジタル化の進展、5G・AI・IoT時代に既存企業がすべきこと

そして、デジタル化の急速な進展という面では、既存企業は、むしろサブスク化の波に上手く乗った方が有意義なマーケティング機会を得ることができる。

誤解されがちなのだが、サブスクモデルは単に定額で商品を提供することではない。単なる定額モデルであれば、これまでも新聞や雑誌の定期購読などが存在していた。これらと今のサブスクの違いは、所有よりも利用に価値を見出す消費者に対して、モノを利用するサービスを提供していること、そして、サービスがデジタル化されていることだ。サブスクではサービスそのものがアプリで提供されていたり、サービスはリアルであっても決済や通知機能などがデジタル化されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中