最新記事

ビジネス

サブスク化できないものはあるのか? 多方面に広がる定額使い放題の波、既存企業はどうすべきか

2019年11月15日(金)13時20分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

企業のマーケティングとしてはデジタル化が非常に重要だ。以前から、過去の購買データや自己申告された性別や年齢、職業、趣味等の属性データから、商品やサービスの提案は行われていた。一方で、スマホのアプリとして提供されたサブスクでは、逐次デジタル化された行動データも得ることができ、AI・IoTを活用した高度なデータ解析に基づくマーケティングが可能だ。例えば、アプリの閲覧履歴から、消費者が迷っている商品を把握し、より適切な提案ができる。また、位置情報が得られることで、消費者が自社の店舗、あるいはライバル店舗に近づいた時に自社商品の宣伝をプッシュ通知するなど、最適なタイミングで訴求できる。これらの作業は全てデジタル化・自動化されているため、生産性向上の観点でも意義は大きい。

さらに、現在、通信キャリアやネット通販大手などで見られるように、複数のサービスを提供するプラットフォーム企業であれば、横断的なサービス提供も可能だ。例えば、子ども用の携帯電話を契約した顧客に、アニメや教育コンテンツ、宅配野菜のサブスクなどを提案することもできる。

商品を売って利益を計上する既存の売り切りモデルでは、企業と顧客の関係は基本的に毎回、一度完結する。一方、サブスクモデルでは、月単価は安くともデータに基づく最適な提案をし続けることで、生涯に渡って顧客とつながり続けることもできる。サブスクは購入価格を月当たりで割り戻すのではなく、顧客の様々なデータを分析することで、定額サービスをいかに長く継続してもらうか、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)をいかに高めるかという工夫をすることが肝だ。

5G時代が目前に迫る中、既存企業は早急に事業のデジタル化を進め、顧客との強固な関係を確立する基盤を構築するとともに、AI・IoTを駆使し、新たな価値を創出することが生き残る鍵だ。

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。

Kuga_Profile.jpeg[執筆者]
久我 尚子
ニッセイ基礎研究所
生活研究部 主任研究員

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国境警備隊、シャーロットの移民摘発 初日に81人

ワールド

エプスタイン文書「隠すものない」と米下院議長、公開

ワールド

北朝鮮軍、西部クルスクで地雷除去支援 ロシア国防省

ビジネス

米バークシャー、アルファベット株43億ドル取得 ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中