ポイント還元終了してもキャッシュレスは定着するか? 生産性改革のカギにも
脱・現金で狙う生産性改革
政府がキャッシュレス決済を強力に支援する背景には、非製造業の生産性改革という狙いがある。
経済産業省は、その目的は「小売業の効率化、そして生産性の向上」(キャッシュレス推進室)だと言い切る。
18年4月に同省がまとめた「キャッシュレスビジョン」では、「労働者人口減少の時代を迎え、国の生産性向上は喫緊の課題」と、その狙いを掲げている。店舗などの無人化・省力化のほか、年間1兆円と言われるレジの現金取り扱いコストの節約と、平均4時間のレジ労働時間の削減を、他の付加価値の高い仕事へ振り替えようというものだ。小売やサービス分野での生産性への寄与は大きいとみている。
実際に消費の現場ではメリットを感じている企業もある。ローソンの金融・デジタル事業本部の熊谷智・執行役員は「現金ハンドリングのオペレーションや外国人客の支払い対応が楽になるほか、後払いにより客単価が上がっている効果もある」と、実際に消費の現場でのメリットを指摘する。
ビジネスモデルに課題
ただ政府の狙い通りに脱・現金が生産性の向上に寄与するのかは、今のところ未知数だ。
JR東日本ではSuicaのような移動データなどプライバシーにつながるデータの活用は「考えていない」としている。
paypayでは、親会社であるヤフー・ジャパンのインターネットサイト広告への活用が視野に入る。さらにその先、生活全般にわたるサービスの展開を構想中だ。すでに公共料金支払いサービスには参入。加えて金融サービス、貯蓄・投資、チケットなどのサービスといった生活ツール全般にわたる事業との連携を想定、「提携先と一緒に利益をわかちあう形のビジネスを想定している」(柳瀬氏)という。
ただそのためには、payapayが広く支払手段として定着し、同社と提携することが大きなメリットと企業に感じてもらうことが前提だ。
従来から「Pontaカード」発行による会員組織を持つローソンでは、性別や年代といった属性と購買動向のビッグデータを、売上予想や新商品の開発、流通の効率化などに活用してきた実績があり、データ活用の効果は大きいとしている。
それでも「まだ決済のスタンダードは混とんとしている。現金信仰の強い日本でどの程度キャッシュレス決済が定着するかは不透明だ」(熊谷氏)として、現金も含めて消費者のニーズに合わせた決済手段の提供を判断していく姿勢を示している。
(編集:佐々木美和)
[東京 1日 ロイター]
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