日産、不正報酬の西川社長留任の方向 「火中の栗拾う」後任不在の現状露呈
悩ましい後任選定
西川社長は今年5月の決算発表で、「2年か3年で、元に戻す」と語るなど、業績回復を自ら成し遂げた後、しかるべき時期に後継者へ引き継ぎたいとの意向を示している。ある日産幹部は「西川社長は職にとどまることに執着しているわけではない」と擁護する。
実際、日産社内では、今回の不正報酬受領問題が発覚する前から西川氏の後任を探す動きがあったが、暫定指名・報酬諮問委員会委員長だった井原慶子社外取締役は「経営の安定性と継続性」を優先した、と西川氏続投の理由を語っていた。指名委員会も今回の不正報酬問題とは別に、7月から西川社長の後任選びに着手している。
「社内外、国籍を問わず世界中から候補を探している」(事情に詳しい関係者)というが、 筆頭株主の仏自動車大手ルノーとの経営統合や資本関係見直しを巡る問題がいまだ解決せずくすぶり続ける中で「火中の栗を拾いたがる人はなかなかいない」と日産幹部は話す。
むしろ、ルノーとの統合に反対している西川社長が矢面に立って交渉を取り仕切る方が円滑に進むとの思惑もあるという。先の幹部は、不正報酬受領問題を「ここぞとばかりに西川降ろしに使われるのだけは避けたい」と語っている。
とはいえ、ゴーン被告追及の急先鋒だった西川社長が逆に糾弾される事態となり、世間の日産経営陣への風当たりは強まっている。社員の士気低下や企業イメージがさらに悪化するリスク、後任選びの難しさとの間で揺れる日産の先行きは、なかなか晴れない。
(白木真紀 取材協力:Linda Sieg 編集:平田紀之)
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