最新記事

日本企業

日産、不正報酬の西川社長留任の方向 「火中の栗拾う」後任不在の現状露呈

2019年9月7日(土)11時16分

日産自動車の西川広人社長(写真)は9日の取締役会で、株価連動型報酬の不正受領問題による辞任を強く求められることなく、留任する可能性が高い。写真は7月25日、横浜の日産本社で撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

日産自動車の西川広人社長は9日の取締役会で、株価連動型報酬の不正受領問題による辞任を強く求められることなく、留任する可能性が高い。意図した不正でなく法律違反でもないというのが理由だが、まだ後任が決まらないという事情もにじむ。社員や世間から不正続きの経営陣に対する風当たりが強まる中、西川社長の進退に注目が集まっている。

辞任は「求めない」方向で調整

「経営陣の不正が相次いでいるが、このまま乗り続けていて大丈夫なのだろうか」――。ある日産車のユーザーは先行きへの不安をこぼす。ある日産社員も「ゴーン時代から経営陣との距離は感じていたが、ますます冷めていく。現場が頑張っているのに虚しい」と肩を落とす。

日産は、会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された前会長、カルロス・ゴーン被告の不正を防げなかった反省から、6月の定時株主総会で「指名委員会等設置会社」への移行を決定。社外取締役を中心とする指名・報酬・監査の3つの委員会によるガバナンス監視体制が動き出している。

不正報酬受領問題は、この中の監査委員会に4日報告された社内調査の結果から判明した。株価に連動した報酬を受け取る権利「ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)」による報酬制度は、ゴーン被告がトップだった旧体制から続く仕組みだ。

ゴーン被告の側近だった前代表取締役のグレッグ・ケリー被告が、今年6月発売の月刊誌「文藝春秋」に掲載されたインタビューで指摘したことで今回の問題は注目された。ケリー被告はSARの報酬額が決まる行使日を変更し、西川氏が不正に4700万円多く受け取っていたと糾弾した。

もっとも、SARによる報酬制度はゴーン体制時代のいわば「負の遺産」(日産幹部)とみられており、日産は制度自体を見直す方針だ。

西川氏は5日、記者団に対し、不正に多く受け取ったことを認めたうえで、不正に得た報酬分を全額返還する意向を示した。一方、行使日変更の指示については否定。ケリー被告に手続きを一任していたため、自身に不正の認識はなかったと釈明した。

最終的な判断は9日の取締役会で決まるが、複数の関係筋によると、「不正の意図がないのに本人を責めるのは酷だ」として、監査委員会は西川氏には辞任を求めない方向で調整している。

西川氏以外にも複数の役員が同様の不正な上乗せによる報酬を得ていたが意図的ではないとして、こちらも処分検討の「対象外」(関係筋の1人)という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア国営TV、米有権者をトランプ氏に誘導か=米情

ワールド

アングル:ハリス対トランプ」TV討論会、互いに現状

ワールド

SNS、ロシア影響下疑惑の投稿にほぼ未対応

ワールド

アングル:サウジに「人権問題隠し」批判、eスポーツ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...「アフリカの女性たちを小道具として利用」「無神経」
  • 3
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに
  • 4
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 5
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 6
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 7
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 8
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 9
    川底から発見された「エイリアンの頭」の謎...ネット…
  • 10
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つの共通点
  • 4
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 5
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 6
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 7
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 8
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中