転換期を迎えるラジオ 広告収入低迷にコスト増の民放、地域密着で活路
3月27日、ラジオが岐路に立っている。写真は1955年製のソニー初のトランジスターラジオ。東京のソニー資料館で2012年2月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
ラジオが岐路に立っている。スマートフォンの普及などメディア環境が多様化する中で、主な収益源である広告費が低迷。既存設備を維持・更新するコストの増加にも直面し、明るい展望が描けない。北海道ではコミュニティFMと連携し、経営資源を相互に活用する新たな取り組みが始まった。新たなビジネスモデルを模索する動きが続いている。
差がなくなるAMとFM
「ラジオは寄り添いのメディアと言われている。テレビは『お茶の間の皆様』だが、ラジオは『ラジオの前のあなた』。一人称で問いかけるメディアはラジオしかない」──。
コミュニティメディア論などを専門とする大正大学地域創生学部の北郷裕美教授はこう述べ、リスナーがつながりを感じやすいラジオには「将来性がある」との見方を示した。
一般的にFMは音質の良さから音楽番組、AMはトーク番組に向いていると言われているが、インターネットの普及で状況は変わりつつある。音楽配信アプリで気軽に音楽が楽しめるようになった現在は、FMも音楽だけで勝負する時代は終わった。
さらにAM放送は、難聴対策や災害対策を目的にFM波でも同じ番組を放送しており(ワイドFM)、今や両者の差はほとんどない。AM、FMともにあらためて「番組力」が問われる時代になった。
27日に開かれた放送事業の基盤強化に向けた有識者会議で、ローカルファースト研究所の関幸子代表は「FM局、AM局の制度を維持するという視点ではなく、消費者に対してラジオをどのように継続できるのか、という視点で判断する時期に来ている」と語った。
民放連研究所の調査によると、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震で最も役立った情報源は、ラジオだった。1991年度のピーク時に2040億円あったAM局の営業収入は2017年度に797億円まで減少した。この26年で約6割減った計算だ。
ラジオ局の自助努力もさることながら、災害時に国民のライフラインにもなるラジオをどう維持していくか、制度面でも考える時期に来ている。
民放連は27日の会議で、AM放送を設備の維持コストが安いFM放送に乗り換えることができるよう、総務省に制度改正を要望した。