転換期を迎えるラジオ 広告収入低迷にコスト増の民放、地域密着で活路
コミュニティFMとの連携
そうした中、既存のAMラジオ局で新たな取り組みも始まった。HBC北海道放送と北海道のコミュニティFM23社が加盟する日本コミュニティ放送協会北海道地区協議会は2018年9月1日、「放送事業等に関する連携協定」を締結した。
地域情報・気象情報の相互共有や災害時の相互協力、パーソナリティの相互出演などの連携を図っていく。
この連携を受け、HBCラジオは昨年10月から、帯番組の中で週1回、連携先のコミュニティFMが発信する情報を伝えるコーナーをスタート。4月からは連携をさらに拡大する。
HBC北海道放送ラジオ局編成業務部の角田拡樹部長は「これまで地域の情報を細かく伝えることができなかったが、一緒にやることで補完できる」と説明した。
行政や観光、交通情報など地域情報を提供する地域密着型メディアであるコミュニティFMと道内全域をカバーするHBCラジオの提携は、ネット時代における新しいビジネスモデルの模索とも言える。
大正大学の北郷教授は「ラジオは本来、コミュニティーメディアだ」と指摘、連携強化は県域ラジオが進むべき方向の1つとの見方を示した。
TBSラジオの入江清彦会長は、27日の会議で「われわれが決して忘れてはいけないことは、民放ラジオは地域に根差し、地域住民の知る権利に応え、災害時には安全・安心のための災害放送に全力を挙げることだ」と強調した。
インターネット配信サービス「radiko(ラジコ)」の活用など、IT技術も活用しながら生き残りをかけているラジオ。
一方、音声市場全体をみると、ビジネスの専門家やミュージシャン、インフルエンサーなどの「声のブログ」を提供するベンチャー企業「Voicy」(東京都渋谷区)が急成長するなど、競争は厳しさを増す一方だ。
AM局がFM局へのシフトを志向するのも、高コストのAM設備維持費を低コストのFM設備に切り替えたいというのが本音だ。
ただ、三菱総合研究所の調査によると、ワイドFMに対応したラジオの普及率は現在53%にとどまっている。対応ラジオが増えなければ、収入の大半を占める広告費がさらに減少する可能性があり、「縮小均衡」の動きが一段と加速しかねない。
深夜放送で輝きを放っていた1960─70年代のAMラジオ。果たしてラジオ各社は、その勢いを取り戻すことができるのか──。
(志田義寧 編集:田巻一彦)
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