最新記事

事件

ファーウェイと対イラン制裁を結んだ点と線 米当局「潜航捜査」の舞台裏

2019年3月12日(火)18時00分

ZTEからファーウェイへ

関係者によると、ZTEの捜査が終結に向かいつつあった2017年2月14日、財務省や商務省、国土安全保障省や司法省から十数人が参加し、ワシントンでファーウェイ追及の方策について話し合った。

このときブルックリンの連邦検察が、ファーウェイと英金融大手HSBCとの関係を議論したという。HSBCは米国の資金洗浄禁止法や制裁法違反で、2017年末まで米検察によるいかなる捜査にも協力することを義務付けられていた。

HSBCは2016年末にファーウェイに関する内部調査を始めていた。ロイターが閲覧した資料によると、米当局者はワシントンでの会合から数カ月間、同行から情報提供を受けながら、スカイコムとファーウェイを関連付ける証拠を集めた。

調査では、孟氏が2013年にHSBCの行員と面会したことが判明。孟氏はその後、この行員にパワーポイントの資料を渡した。そこにはファーウェイとスカイコムの関係が記載されていたが、米側の起訴内容は、その記述を不正確なものだとしている。

HSBCはロイターに対し、米司法省の要請に応じて情報を提供したと回答した。

ワシントンの検察当局はこれと並行し、ファーウェイに対するより伝統的な輸出管理の捜査を行った。この中には、ロイターが2012年に報じた、コンピューターを違法にイランに輸出しようとした疑いも含まれていた。

2017年4月、ファーウェイの米国法人に対して大陪審の召喚状が出され、この問題が刑事事件として訴追されることが初めて明確に示された。

これを察知したファーウェイは、イランとの取引を知る中国人従業員を米国から出国させたり、証拠を隠滅したと、検察側は指摘している。孟氏など幹部は、米国への渡航を見合わせるようになったという。

ファーウェイ捜査に詳しい関係者2人によると、ローゼンスタイン司法副長官は2017年夏、ブルックリンの連邦検察に訴追を任せることを決め、ワシントンの検察は手を引いた。ブルックリン検察は、すでに司法省の資金洗浄対応部署と連携しており、他の省庁の担当者も、ブルックリン検察のチームに合流した。

法律の専門家によると、違法にイランへ輸出された米製品の多くは米当局の捜査権限が及ばないため、銀行詐欺のルートの方が、訴追に早くたどり着ける可能性があったという。また、制裁違反や輸出違反より銀行詐欺の方が、他国政府に容疑者の逮捕と身柄の引き渡しを要請できる可能性が高く、時効も長かったという。

孟氏とファーウェイは、銀行をだまして不正送金した詐欺の罪で起訴されている。訴追書類によると、前出のパワーポイント資料の「数々の不正確」な記述が、孟氏の訴追内容の柱になっているという。

事件の指揮を執るようになってから12カ月後、ブルックリン検察は秘密裡に孟氏の逮捕状を取得した。

その約4カ月後、孟氏が12月1日にメキシコに向かう途中でバンクーバーに立ち寄るとの情報が入り、カナダ当局に空港で拘束するよう要請した。

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)

Karen Freifeld

[6日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中