ファーウェイと対イラン制裁を結んだ点と線 米当局「潜航捜査」の舞台裏
空港で入手した証拠
孟氏は今月1日、逮捕前に取り調べを受けたのは権利の侵害に当たるとしてカナダ政府などを提訴。訴えによると、彼女は2018年12月1日、バンクーバーの空港で飛行機を降りたところを呼び止められた。国境警備の当局者がパスポートを確認した上で、孟氏を別室に移動させた。
そこで、携帯電話2台とタブレット端末「iPad(アイパッド)」、私用のコンピューターを提出。パスワードも教えるよう求められ、担当官が機器の中身を確認したという。
ロイターは、当局が孟氏の端末機器からどのような情報を得たか把握できていない。ただ、孟氏や他の中国の通信機器メーカー幹部が所持品を国境警備当局に提出したのは、これが初めてではなかった。
米当局はファーウェイ訴追の数年前から、国内の空港を通過する通信機器メーカー幹部から捜査に資する情報を差し押さえていたと、ファーウェイとZTEへの捜査や、孟氏の訴追に詳しい複数の関係者は明かす。
例えば2014年、孟氏がニューヨークのケネディ国際空港から米国に入国しようとしたときのこと。米側の訴追内容によると、当局は孟氏が所有していた端末の1つに、ファーウェイとスカイコムの関係について、「通常のビジネス協力である」などとする応答要領が残されているのを発見した。
この時も孟氏は別室で追加検査を受け、電子機器を提出させられたと、事情に詳しい関係者は語る。端末は数時間後に返却され、孟氏は解放されたという。
また、同年9月12日、米当局は入国しようとしたZTEの当時のCFOを検査。米国が長年疑念を抱いてきた制裁対象の国々とファーウェイの取引を裏付ける情報が発見されたと、関係者は言う。
このCFOは、アシスタントとともにロンドンからボストンのローガン空港に到着した際に足止めされたという。
アシスタントが運んでいたレノボのノートパソコンには、4人の経営陣がサインした2011年8月25日付の機密文書が保存されていた。制裁対象国でプロジェクトを行うのに必要な製品を、米国で調達するフロント企業設立の必要性を確認する内容だった。
米当局者によると、このときの取り調べがZTEを追及する重要な証拠になったという。
問題の書類には、「F7」という企業が、制裁対象国での契約獲得のため、フロント企業を活用している実態も記されていた。F7とはファーウェイを指すと、ZTEやファーウェイの捜査に詳しい関係者は話す。
この書類は2016年3月、ZTEが米国内のサプライヤーとの取引を禁じられた際に、米商務省がホームページに掲載したものだ。米紙ニューヨークタイムズはその直後、ZTEによるF7の説明はファーウェイに合致すると報じた。
ロイターが閲覧した裁判書類やファーウェイの捜査に詳しい関係者によると、その1カ月後、商務省はファーウェイの米国法人に対し、米国技術のイラン輸出に関する情報の提出を求める召喚状を出した。