トランプ「給料を高く高く高く」政策の成績表 米経済の不安材料は?
WHOSE ECONOMY IS IT?
雇用は急増などしていない
問題は、景気に対する認識が支持政党によって大きく分かれること。共和党支持者と共和党寄りの無党派層は、73%が経済の状態を良好と考えている。民主党支持者と民主党寄りの無党派層の場合、この数字は35%にすぎない。
それに、どちらの党の支持者も過半数が(アメリカ経済全体はともかく)自分自身の経済的先行きを楽観しているが、それがトランプに対する評価に結び付いていない。アメリカ経済は好景気なのに、トランプの支持率は40%ほどにとどまっている。
「これほど好景気が長く続いているのに、それを政権の功績と考える人がこんなに少なかったケースは過去に例がない」と、民主党のバラク・オバマ前大統領の下で大統領経済諮問委員長を務めたオースタン・グールズビーは指摘する。
民主党は、トランポノミクスが中流層にほとんど恩恵をもたらしていないと批判している。実際、賃金水準は最近ようやく上向き始めたところだ。トランプ政権発足後、賃金はほとんど増えていない。クィニピアク大学の世論調査によれば、有権者の58%は、政権が中流層を十分に支援していないと考えている。
実際のところ、トランプの政策はアメリカ経済にどのような影響を及ぼしているのか。
80年代はじめに当時のロナルド・レーガン大統領がスタグフレーション(物価上昇と景気後退が同時に進行する現象)に終止符を打ち、20年間にわたる好景気への道を開いたように、トランプもアメリカ経済を急加速させたのか。それとも、大規模な景気刺激策と減税により一時的に景気が上向いているだけで、その効果はすぐに消えてしまうのか。
トランプ政権の主張は明快だ。法人税減税と大規模な規制緩和により経済に活力が生まれれば、企業の投資が促され、うまくいけば雇用が増加するというのだ。
現実には、そう簡単にはいかない。企業が従業員に臨時ボーナスを支給すると発表するたびにトランプは喝采を送ってきたが、側近たちは渋い顔をしていた。例えば通信大手AT&Tは、トランプが減税法案に署名するに伴い、20万人の従業員に1000ドルずつボーナスを配ると発表したが、1回限りのボーナスが景気を押し上げる効果は乏しい。
企業が臨時ボーナスを支給するのは、投資の機会が少ないことの表れなのではないかと指摘するエコノミストもいる。有望な投資対象があれば、企業はボーナスよりも投資に金を回すはず、というわけだ。
トランプは、ヤングズタウン・ツール&ダイのような企業にスポットライトを当てたほうが政治的に賢明だったかもしれない。同社のムルジェノビッチは、1300万ドルの工場拡張計画を決めたことについて「税制の変更は間違いなく判断に影響した」と述べている。
トランプの減税策が功を奏するかは、企業が投資を増やすかどうかで決まる。企業の投資が増えればたいてい、雇用の増加、生産性の向上、賃金の上昇につながるからだ。
生産性が高まれば、企業は値上げをせず、利益が圧迫されることもなく、賃金を引き上げられる。生産性の上昇は、経済成長を持続させる魔法の杖なのだ。しかし、アメリカの生産性は10年以上伸び悩んでいる。
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