最新記事

教育

倒産する大学の4つの特徴:地方、小規模、名称変更、そして...

2018年12月3日(月)10時25分
松野 弘(社会学者、大学未来総合研究所所長)

2018年度の入学定員充足率を大学の規模別に見ると、定員が3000人以上の大学は100.6%、1500人以上3000人未満の大学は100.5%、1000人以上1500人未満の大学は104.3%、という定員充足率にもかかわらず、300人以上400人未満の大学は98.2%、200人以上300人未満の大学は99.4%、200人以上300人未満の大学は95.8%、100人以上200人未満の大学は95.8%、100人未満の大学は92.8%となっている。

これを見てわかるように、入学定員の規模が大きい大学は定員を充足し、入学定員400人未満の規模の小さな大学は定員割れだ。同調査では、中国・四国・甲信越・北海道の私立大学では定員割れになっている。

しかし、それ以下の規模になると状況が変わってくる。400人未満の大学は、どの区分においても定員割れとなっている(下の表を参照)。

2018年度 私立大学 規模別 定員充足率

matsuno181201-b-chart2.png
(出所:日本私立学校振興・共済事業団『平成30年(2018)年度私立大学・短期大学等入学志願動向』をもとに筆者が編集)


地域社会と大学のあやうい関係

倒産した大学の傾向として、これまでに「歴史が浅い」「ブランドイメージが低い(名称変更が多い)」「規模が小さい」という特徴を取り上げてきた。そして、もう1つ、いわゆる三大都市圏以外にある「地方の大学」という点が挙げられる。

下の表のように、首都圏や中核都市がある県の大学では入学定員充足率が100%を超えた一方で、それ以外の地方にある私立大学では、定員割れを起こしている傾向がある。

2018年度 私立大学 地域別 定員充足率

matsuno181201-b-chart3.png
(出所:日本私立学校振興・共済事業団『平成30(2018)年度私立大学・短期大学等入学志願動向』)


この背景には、すでに指摘されてから久しい印象のある少子化問題に加えて、地方から都市部、特に東京圏への人口流出がある。わが国は2008年をピークとして人口減少局面に入っており、2050年には9700万人程度にまで減少すると予測されている。

加えて地方と東京圏の経済格差等が、若い世代の地方からの流出と東京圏への一極集中を招いている。これにより首都圏(東京、埼玉、千葉、および、神奈川県の一都三県)への人口集中は全人口の3割という、諸外国に比べても圧倒的に高い一極集中を生み出してしまった(首相官邸『まち・ひと・しごと創生総合戦略 (案)』P1)。

その結果、地方経済の縮小に拍車がかかり、それがさらに東京圏への人口流出を呼ぶという「負のスパイラル」が生まれはじめているのだ。

地方の大学もこの「負のスパイラル」とは無縁ではいられない。地方の若い世代は大学進学時と卒業時に東京圏へ流出しており、その要因として政府は、地方に魅力ある雇用が少ないことと、地域ニーズに対応した高等教育機関の機能が不十分であることを挙げている(前掲著P38)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中