倒産する大学の4つの特徴:地方、小規模、名称変更、そして...
そして、その対策として、大学生が地元に定着するための取り組みを行うほか、2014年12月に「大都市圏、なかんずく東京圏への学生集中の現状に鑑み、大都市圏、なかんずく東京圏の大学等における入学定員超過の適正化について資源配分の在り方等を検討」(前掲著P39)することを発表した。
すなわち、首都圏などの大都市部にある私立大学の定員超過を抑制するということである。これによって政府は2020 年までに地方における自県大学進学者の割合を平均 36%(2013 年度全国平均 32.9%)まで引き上げることを目標としている。
文部科学省が私立大学の定員超過を抑制へ
それでは、どのようにして大都市部の私立大学の定員超過を抑制するのか。
政府が私立大学に交付している補助金は定員割れの度合いに応じて減額されるが、これは定員割れだけではなく、定員超過に対しても同様の減額措置が取られることになっている。
現在、定員8000人以上の大規模大学の場合、定員超過率が120%以上になると補助金は交付されない。この交付停止の基準を、大都市部の大学に限って110~107%まで厳格化する方針を打ち出したのだ。
対象となるのは首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川)、関西圏(京都、大阪、兵庫)そして中部圏(愛知県)の私立大である(毎日新聞2015年2月22日朝刊より)。これによって三大都市圏における私立大学の定員超過を抑制し、その分の学生を地方大学に回すという算段である。
しかし、これは問題の本質に対する解と言えるであろうか。補助金という「外圧」による定員の数字合わせよりも、現在、日本の大学が抱えている多くの課題にこそ取り組むべきであろう。
すなわち、有名私立大学を除く大半の私立大学にみられる大学生の学力低下や、AO入試・推薦入試という名による事実上の無試験制度、そして、大学教員の質の向上や大学における教育・研究活動の質と量の向上である。
本来、これらの課題は都市部か地方かを問わず、大学の本質と役割という点で違いはないはずである。真に魅力のある大学であれば優秀な学生や教員が集まるものであり、そのような大学だけが「大学大倒産」の時代を生き延びるべきなのである。
最近では、大学倒産にからんだ話になると、「大学はビジネスだ」「金儲けができれば、どんな学部でもつくるべきだ」「受験生は何でもかき集めればよい」等と、およそ高等教育機関の責任者とは思えないような発言を耳にする。
企業でも、いい商品づくりができなければ、どんな大企業でも倒産する時代だ。大学の財産であり商品は大学教員であり、それを支えるのはすぐれたスタッフであり、大学を存続させるのはいい学生が集まり、大学教育を通じていい学生を社会に送り出すことだ。こうした大学における経営・教育・研究の改革を放棄した大学は「必ず」淘汰されていくことになるだろう。
[引用参考文献]五十音順
1)asahi.com 「母校が消える 学校法人、相次ぐ破綻」
2)MSN産経ニュース「神戸ファッション造形大廃校へ 定員確保が困難」
3)衆議院会議録情報 第009回国会 文部委員会 第3号
4)首相官邸 まち・ひと・しごと創生会議(第4回)資料2「まち・ひと・しごと創生総合戦略 (案)」
5)首相官邸 教育再生実行会議『「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について(第六次提言)』
6)日本私立学校振興・共済事業団『平成30(20184)年度私立大学・短期大学等入学志願動向』
7)日本経済新聞2012年4月30日『東京女学館大、16年3月閉校 ブランド力生かせず』
8)毎日jp 「三重中京大:短大ともに廃止 来年度から募集停止」
9)松野弘(2010)、『大学教授の資格』NTT出版
10)松野弘(2015)、『大学教授になるための戦略的勉強術』PHP研究所
11)文部科学省『大学設置基準』最終改正:平成二六年一一月一四日文部科学省令第三四号
12)文部科学省ホームページ「大学等の名称変更など」
13)読売新聞「開学当初から経営難、14年で閉学した大学」2013年3月16日
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