最新記事

日本企業

「M&Aも優れた経営者も不要」創業100年TOTOが成長し続ける理由

2018年1月12日(金)18時22分
杉本りうこ(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

――名門企業で働くと、社員はつい安心や慢心に陥りがちです。

いやあ、僕らは安心できるような会社ではありませんよ。だって、たかだか100年ですから。欧州には創業200年を超える会社がいくつもある。僕たちも200年、300年と続く企業になりたい。だから、やるべきことはまだ山ほどあるのです。そのひとつがデザインですし、品質改善もコストダウンもまだまだできる。お客さまからのクレームだってゼロじゃない。TOTOであることに誇りは感じていますが、安心なんてまったくありません。

利益は目的ではなく手段

――社員はそこまでハングリーになれますか? 製品が安定的に売れて、若干クレームがあっても大半のお客さんに満足してもらえて、お給料も悪くなければ、現状維持で十分だとなるのが人間の性です。

普通の会社で満足するなら、それでもいいんじゃないですか。でも僕たちは普通の会社で終わりたくない。この世の中にTOTOという企業があってよかった。そう言われる存在になりたい。僕らの使命は需要家の満足を求めることであって、自分が得られるものに満足することではないのです。

もちろん企業である以上、きれいごとばかりはいいません。利益を出して初めて、経営したといえます。でも利益は目的じゃない。手段なのです。何の手段か? もっといい商品を作るために研究開発投資をやる。そこで働く人が生き生きしてもらえるよう、社員の福利厚生を充実させる。申し訳ないけれど、投資家はこれらの後だと思っています。

――300年成長し続ける会社の株を長期保有すれば、投資家も結果として得をする。

そう思っています。そのためにも、もっと海外にTOTOファンを増やしたい。国内も地方にはまだまだ古い和式便器が残っていますから、もっと清潔で快適なトイレに接してもらいたい。もっと、もっと、と言っています。

――100年経っても、まだまだ挑戦者。

はい。僕らの強みは、良品の供給と需要家の満足という志を高く掲げ続けられる会社であること。志の高さだけが、挑戦するモチベーションを維持するのだと思っています。

toyokeizai180112-5.jpg

喜多村 円(きたむら まどか)/1957年福岡県生まれ。1981年に東陶機器(現TOTO)入社。バブル崩壊後の1990年代に不採算に陥っていた浴槽事業を立て直す。2014年から現職(撮影:今井康一)

TOTOの会社概要は「四季報オンライン」で

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中