最新記事

メディア

企業が群がる、インスタの消える動画「ストーリーズ」の威力

2017年10月27日(金)15時04分
長瀧菜摘(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

toyokeizai171027-4.jpg

ストーリーズを用いたルイ・ヴィトンの広告。スマホ全画面表示という形態に合うよう、ストーリーズのためだけの企画・制作を手掛けた(写真:Instagram)

また、配信直後から効果測定を行い、コンテンツや配信形態を柔軟に見直すことも重要だ。米アップル傘下でヘッドホン・スピーカーを展開するブランド、Beats(ビーツ)のキャンペーンは、この点がうまくいった例といえる。

ビーツはストーリーズでの広告を展開するにあたり、有名アーティストを起用しブランドイメージを訴求するものと、製品の機能面やカラー展開の紹介を前面に出すものの2パターンを用意。同時に配信を始め、後者がより大きな購買に結び付いたことがわかるとすぐに、半々だった配信量の割合を後者メインに切り替えた。結果、自社通販サイトへの訪問が従来比11倍に、訪問者の購入率も30%向上した。

インスタグラムで広告を展開する業種は、従来の高級ブランド品、化粧品、デジタル製品などに加え、最近では一般消費財、保険や学生ローンなどの金融商品にも拡大。始まったばかりのストーリーズでは、広告出稿はまだまだ増えそうだ。

親会社フェイスブックの2017年4~6月期決算では、広告収入が91億6400万ドルと、前年同期比で47%伸びた。牽引役となったのは広告収入の8割以上を占めるモバイル広告だ。サービスごとの内訳は公表されていないが、現地報道によれば、同社幹部が「インスタグラムの貢献度が増している」と言及。ストーリーズの広告も、その一翼を担っているのは確かだ。

ただ、ネット広告の業界全体を見ると、明るいニュースばかりではない。米グーグルや米アップルがネット上における利用者の行動のトラッキングを制限する方向に動いている。しつこく表示されるターゲティング広告に煩わしさを感じている人が増えていることも関係しているだろう。

インスタユーザーの多くは企業もフォロー

インスタグラムの場合、「利用者の80%以上が何らかの企業アカウントをフォローしている」(同社)と、状況が異なる面はある。ただ、広告のせいでサービス自体が嫌われてはいけないという課題意識を持っているのは同じだ。

「広告主や広告コンテンツが増えれば増えるほど、社内に知見が溜まり内容やマッチングの精度を改善していけるはず。今後もどんな広告なら積極的に見てもらえるか、どんな人にどんな広告がマッチするか、ユーザーの行動からつねにシグナルを拾っていく」(スクワイヤーズ氏)。

同社では広告コンテンツの企画・制作についてコンサルティングを行う専門部署も設置し、広告主との直接の協業も強化している。利用者の好みやユーザビリティを考慮しながら広告収益を拡大していくには、絶え間ない改善が求められそうだ。

toyokeizai171027-5.jpg

ジム・スクワイヤーズ氏は、ターゲティング広告の精度向上に自信を示した(撮影:今井康一)

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中