日本攻略を狙い、電動のスポーツバイクが続々と登場するワケ
そこで自動車の電動パワーステアリング用モーターや電動工具で培ってきた技術を製品開発に活かした。低速域だけでなく、高速域でも強いアシストを可能にした。アシストの強度も「エコ」から「ターボ」まで4段階で細かく設定。結果、ボッシュ製品は「ユニークなサイクリング体験ができるというサイクリストの評価を勝ち取った」(ベニーニ氏)。
同時に、自転車メーカー各社がバッテリーをフレームと一体型にするなどしてデザインを磨き上げた結果、サイクリストだけでなく、流行に敏感な若年層もEバイクに飛びついた。Eバイクが売れ出すと、自転車メーカーは車種を増やし、それがまた新しい顧客層を取り込むという好循環が生まれた。
この流れに乗り、ボッシュは世界のEバイク市場の7割を占める欧州で電動自転車向けモーターユニットのトップサプライヤーに登りつめた。今では70ものブランドに供給する。最大市場のドイツでは25%を超えるシェアを持つ。ボッシュのモーターユニットは自転車ブランドにとっても性能をアピールする武器にもなっている。同社が欧州で製品を供給するEバイクの最低価格は30万円で50万円を超える高級モデルも珍しくない。
日本人サイクリストのこぎ方を徹底研究
ボッシュは欧州での成功体験を活かし、日本でも高価格帯のスポーツタイプ市場を攻略したいところだが、欧州とはやや事情が異なる。それは日本固有の規制だ。電動アシスト自転車では時速10kmまでは人力の最大2倍(200%)でアシストができるが、10kmを超えると徐々にアシスト力を減らし、時速24kmでアシストをゼロにしなければならない。
欧州ではアシストをゼロにする速度は時速25kmで日本とほぼ同じだが、アシスト比率には規制がない。人力の3倍(300%)といった高いアシスト比率も可能なため、スポーツタイプが普及したという見方もある。しかし、一国の法規制を変えるのは容易なことではない。ボッシュは日本の法規制に適合させた上で、日本人サイクリストのニーズを徹底的に調べ上げた製品を投入することにした。
ボッシュが展開するEバイク向けユニットは4種類。日本市場には3.2kgと小型軽量ながらも十分なパワーが出る2タイプの中から、トルクが大きいほうを選んだ。日本人特有の自転車のこぎ方があるからだ。
体格の違いからか、日本人はペダルをこぐのがヨーロッパ人に比べると遅い上、左右にぶれやすい。トルクが大きいほうがスムーズにこぎ出せると考えた。スムーズで自然な加速はストップ&ゴーが多い街中や急な上り坂でサイクリストの脚力をカバーできる。同社としては、通勤やレクリエーションなどを目的に、デザイン性の高い「Eバイク」を欲している若年層向けに訴求したい考えだ。