最新記事

人民元

国際通貨って何?中国はまだ猛勉強中

2016年1月4日(月)11時30分
陳龍(ガベカル・ドラゴノミクス社エコノミスト)

為替相場が不安定化する

 元がSDRの構成通貨に採用されたことで、中国は栄誉だけでなく、新たな責任と課題も担うことになった。中国人民銀行は当面、少なくとも2つの問題を解決する必要がある。

 まず元のレートを一本化することだ。ギャップが小さくなったとはいえ、元には今も2つの為替レートが存在する。中国人民銀行が基準値を設定して変動幅を管理する、オンショア(中国本土)市場向けレートと、オフショア(中国本土以外)市場の実勢レートだ。

 元相場は10年前に管理変動相場制を導入した後も、事実上緩やかにドルに連動されてきた。それを完全に廃止すれば、為替相場が不安定になるのは必至だ。中銀として、為替と金融を安定させる中国人民銀行の手腕が試されることになる。

 次に、元が主要な国際通貨になれば、金融当局の方針や政策について、よりオープンな説明が求められる。中国人民銀行はIMFに対して、外貨の保有量やオペレーションについて情報公開を進めると約束したが、その約束はまだ果たされていない。

 現に中国人民銀行は、情報公開が不十分なために、市場にパニックを引き起こしたことがある。8月に連日の「通貨切り下げ」に踏み切ったとき、元の基準値を実勢レートに近づけるためのテクニカルな調整だと事前に説明していなかったため、投資家がパニックに陥ったのだ。

 以後3カ月間、中国人民銀行は、これ以上の切り下げはしないと市場を安心させるため、口頭で約束するだけでなく、相当な量の元買い・ドル売りの市場介入を余儀なくされた。高い授業料を払って、中央銀行の仕事を学ぶことになったわけだ。
こうした授業は、まだこれからも続きそうだ。

[2015年12月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、エヌビディア決算無難通過で

ワールド

米天然ガス生産、24年は微減へ 25年は増加見通し

ワールド

ロシアが北朝鮮に対空ミサイル提供、韓国政府高官が指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中