国際通貨って何?中国はまだ猛勉強中
第3の最も重要な改革は、元の基準値を実勢レートに近づけたことだ。元の対ドルレートは、中国人民銀行が決める基準値を中心とするレートと、実勢レートの2種類があり、2つの間にギャップが存在した。そこで中国人民銀行は8月、前日の市場の終値を参考基準値とすることで、このギャップを縮小した。
ドルの地位にはまだ遠い
外交的な成果や、金融改革以外にも、元がSDRの構成通貨になることで中国が得る恩恵はある。まず、外国人投資家における元の保有が広がり、元の国際化が期待できる。
中長期的には、各国の中銀の外貨準備で、元の占める割合が高まるだろう。ただしそれはSDR入りによって自動的に起きることではなく、世界経済における中国の位置付けの高まりと、国内の債券市場のさらなる開放を反映したものだ。
現在、世界の外貨準備に元が占める割合は1%にすぎない。これは中国経済の規模を考えると、著しく低い水準だ。中国経済は世界のGDPの約13%、世界の貿易の15%以上を占める。
IMFは今回、SDRにおける元の構成比率を10.92%とした。ポンド(8.09%)や円(8.33%)を上回る比率だ。しかしだからといって、各国の中銀が直ちに外貨準備の10%を元建てにするわけではない。
金融のテクニカルな問題として、元のSDR入りによって各国の中銀が元を入手する必要があるのは、IMFからの借り入れ(SDR建て)の為替リスクに備えるためであり、その規模は最小限(約70億ドル分)にとどまるだろう。
より現実的には、向こう5年間に世界の外貨準備に占める割合が、円やポンドと同程度の4%に達すれば大成功だろう。つまり、元はこれまでよりも世界(特にアジア)で広く使われるようになるが、ドルのレベル(約64%)には程遠い。
世界の外貨準備の4%ということは3000億ドル程度だが、それが5年で実現するとなると、中国にとっては毎月50億ドルの資本流入になる。これは現在中国の輸出業界がもたらす外貨獲得量の5%にも満たず、外為市場の短期的な市場心理にも、長期的な資本流入にも、まともなインパクトは与えられない。
実際、元の為替レートは、先進国の金融政策に大きく左右されているのが現状だ。アメリカが近く利上げに踏み切るとみられるなか、EUは主要政策金利の据え置きを決定。ドルはあらゆる通貨に対して強含んでおり、元はさらに下げ圧力にさらされている。中国人民銀行が元高・ドル安の基準値を設定しても、効果は一時的で、今のところ元は対ドルで6.40元前後と3カ月ぶりの安値水準にある。