制裁解除はビジネスチャンス、イランがエアバス100機超購入へ
金融制裁解除により、輸入品支払いに充当する資金もより多く確保できる。米政府当局者は1000億ドル強の資金凍結が解除されると見積もり、イラン中央銀行はもっと少ない290億ドルになると想定しているが、290億ドルでも数カ月分の輸入を賄える。
イランは原油輸出拡大によっても財政基盤を強化できる。ただし足元では原油価格が低迷し、老朽化した国内生産設備の修復が必要なため、当面の増収規模は小さいかもしれない。
成長上振れ
多くのエコノミストは、イランが掲げる8%という成長率について、企業向け各種規制や労働市場などの面で、何年も要する困難な改革を成し遂げない限り、楽観的過ぎる目標とみている。
とはいえ、制裁解除で成長率が大きく跳ね上がる可能性は大きそうだ。アナリストの推計では、制裁によってイラン国内の製造業は3分の1が稼働休止状態に置かれており、今後輸出市場でシェアを回復できればこのうちの相当部分が稼働を再開するとみられる。
中東地域の経済バランスが変化する可能性もある。過去10年にわたりイランが制裁に苦しんできた一方、サウジアラビアなどのペルシャ湾岸産油国は貿易が活発化して投資資金が流入した。
しかし湾岸産油国は現在、原油安に伴う財政悪化で経済が減速している。その半面イランは農業や自動車生産など非石油部門の経済規模が大きいので、湾岸産油国に対する経済面でのこれまでの遅れを取り戻せるだろう。
イランの対欧州連合(EU)貿易額は2014年が76億ユーロだったが、金融制裁が実施される前の11年には278億ユーロもあり、そこまで回復できる余地はある。
米国企業は他の国に比べてイランとの貿易回復が遅れると見込まれている。米政府がテロ防止や人権侵害の名目などでの制裁を続けることが理由だ。それでも米財務省が16日、米企業の海外子会社にイランとの貿易を認めると発表したため、対イラン貿易は増えていくだろう。