日本企業が「爆売り」すれば、爆買いブームは終わらない
関心が高まる「爆買い」の賞味期限だが、日本への信頼性という幻想にあぐらをかいていてはいけない
殿様商売ではダメ 中国経済減速もあって「いつ終わるか」への関心が高まるが、それよりも企業努力をもっとするべきだ Issei Kato-REUTERS
2015年の「新語・流行語大賞」が発表され、プロ野球の「トリプルスリー」とともに「爆買い」が大賞に選出された。だが、そもそも爆買いとはなんだろうか。なぜ中国人は爆買いするのか、爆買いはいつまで続くのかをここで考えてみたい。
「爆買い」は当初は海外資源買収を指していた
そもそも爆買いとは、「海外からの旅行客が日本で大量に買い物をすること」との意味だそうだが、主に中国人観光客をイメージしている。2014年秋以降に中国人観光客が激増、2015年の旧正月でこの言葉が定着した感がある。
それ以後、日本のデパートや家電量販店では中国人需要を確保しようと、中国風の飾り付けをしてお出迎え。今年10月1日の国慶節(建国記念日)には、ある家電量販店に「祝国慶節」の飾り付けが登場し、「日本の建国記念日って10月1日だっけ?」と中国人を惑わすほどの力の入れようとなった。中国人対策の飾り付けやセールを目にした日本人は多く、これが爆買いの印象を深めたことは間違いない。
爆買いという言葉が定着したのは最近だが、さかのぼると、ここ5~6年ほど中国による海外資源買収が「爆買い」「爆食」と表現されてきた。中東の油田を、オーストラリアの鉱山を......といった話だが、中国経済の低迷もあって資源関連はすっかり影が薄くなってしまった。
また中国人観光客による買い物というと、ネガティブな海外ニュースとして使われてきた感がある。たとえば、2008年に中国で粉ミルクにメラミンが混入された事件が起きた後では、「中国人観光客や個人輸入代行業者が粉ミルクを買い占めた! 保護者激怒! 小売店は販売個数を制限」といったニュースがたびたび報じられた。特に中国本土と地続きの香港では影響が大きく、2013年には粉ミルクの持ち出しは1.8キロまでという「粉ミルク持ち出し規制」が導入されたほど。
現在の日本でも一部商品が品薄になっているが、さほど大きく報じられていないのが興味深い。香港の反中国デモではかつて「俺たちのヤクルトを返せ」との横断幕が掲げられたこともあった。ヤクルトに美肌効果がある、抗ガン作用があるといった噂が広がり、中国人が買い占めたことに反発したものだ。ヘイトスピーチが注目を集める日本だが、買い占めや品薄といった身近な問題は外国人排斥に結びついていないようだ。
「ジャパンブランドの信頼性」は勘違い
なぜ中国人はこれほど日本の商品を買ってくれるのだろうか。「ジャパンブランドの信頼性」「富裕層の購買力はすさまじい」という話をする人もいるが、少しピントがずれている。