値下げが中小企業にもたらす5つのリスク(後編)
最近、有名コンビニエンスストアで「おにぎり100円」セールが乱発されています。もともと利益率が高い商品ではありますが、これほどの繰り返しを見ると、現在の売り上げが苦しく、他に売り上げを上げる方法がないのだろうと想像してしまいます。
もちろん、日本有数のコンビニエンスストア・チェーンが安易な値下げの怖さを知らないはずがありません。それでもセールを繰り返してしまっていることからも、値下げの魔力がわかるでしょう。
4.「一番大事な顧客」に不満をもたらす
店や会社にとって、一番良いお客さんは、商品やサービスに満足し、正価で買ってくれるお客さんです。こうしたお客さんは大切にしなければなりません。
しかし、値下げをすることは、普段、正価で買ってくれるお客さんから得た利益を使って、正価では買わない人を優遇することです。これは良いお客さんをないがしろにしているのと同じです。
安売りで行列ができたり、品切れが起こると、正価で買ってくれるお客さんが買いにくくなったり、買えなかったりします。また、普段正価で買ってくれるお客さんの立場からすると、突然値下げされていると、普段自分が買っている値段はふっかけられていたのだと思うかもしれません。特に店で販売するわけではない商品・サービスでは、直接お客さんに値段が見えないだけにその傾向が強くなります。
何も言わないお客さんには正価で売り、値引きを要求されたら安くする。そんなことを知ったら、正価のお客さんは悲しい思いをするに違いありません。
値下げした値段を見て買うお客さんと、正価で買ってくれるお客さん。どちらの満足を大切にしなくてはならないかは、説明するまでもないでしょう。
5.客層が低化する
「セールで値段を下げたら、急にクレームが増えた」
あまり値引きをしない店の社長が言っています。
最初は、セールでお客さんが増えたから十分に接客ができなかったせいなのか、とも思ったそうですが、注意深く見ると、クレームの主は決まって、値引きした時にしか来ないお客さんだったそうです。
このような言い方は気が進みませんが、現実問題として「安売りは客層を低下させる」というのは、多くが認めることなのです。値下げしたものを求めるお客さんは、商品やサービスに込められた思いを理解しようとしない人が多い。そんなお客さんは、売り手を尊重せず、自分の都合だけを考えるため、クレームが増えるのです。
このクレームの影響は小さくありません。クレームによってスタッフのやる気が萎えてしまうからです。
スタッフは誰だって商品やサービスに自信を持って売りたいと思っていますが、値下げによって低化した客層からの理不尽なクレームは、スタッフの自信やプライドを傷つけ、やる気を損なわせてしまいます。つまり、安売りがスタッフの質の低化までもたらしてしまうのです。