最新記事

世界経済

原油安で独り勝ちする米経済

2015年10月13日(火)17時00分
リア・マグラス・グッドマン

 EIAによると、アメリカの石油生産は今年、日量922万バレルと、72年以来最大となる。なにしろアメリカでは、09年の掘削ブーム以来、「年平均10%のペースで(原油を)増産してきた」と、EIAのヘスは語る。それでも来年は日量40万バレル(約4%)の減産が実施されると、EIAは予想する。

 原油価格の急落を受け、生産企業や輸出企業は掘削規模や人員を削減して、採算を合わせてきた。その節減分は計1800億ドルに達する。だが、アメリカでは、国産石油の輸出が禁止されていることもあり、石油備蓄は昨年の水準を25%も上回る。

 中東の主要産油国サウジアラビア、イラク、イランの三つどもえの競争も、過剰供給に拍車を掛けている。IEAによると、イランは7月の核開発協議での合意に基づく経済制裁解除を見据え、OPEC(石油輸出国機構)でサウジアラビアに次ぐ産油国の座を取り戻すべく、積極的な輸出を開始するとみられている。

 一方、OPECの盟主サウジアラビアは昨年11月、原油価格を上昇させるための一方的な減産を否定。むしろ増産によって、価格下落分を取り戻す姿勢を明確にした。しかしIMF(国際通貨基金)の予測によると、サウジアラビアは今年の財政赤字が1500億ドルに達しそうだ。

 8月末、OPECは「公正かつ合理的な(原油)価格」を確保するために、「あらゆる産油国と協議する準備がある」と表明した。OPECはかつて政治的な手段として、減産によって原油価格をつり上げたことがあるが、今回はそうしたコンセンサスを築けそうにない。

 アメリカでの掘削プロジェクト削減や、世界的なエネルギー需要拡大で、原油価格は来年にも上昇に転じるとされる。だが多くの業界関係者は、原油安の長期化という「ニューノーマル」を受け入れつつあるようだ。

[2015年10月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、企業に緊急支援措置へ 米関税受け大統領代行が

ワールド

日本の働き掛け奏功せず、米が相互関税24% 安倍元

ワールド

ロシアが企業ビル爆撃、4人死亡 ゼレンスキー氏出身

ビジネス

米関税24%の衝撃、日本株一時1600円超安 市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中