最新記事

世界経済

原油安で独り勝ちする米経済

2015年10月13日(火)17時00分
リア・マグラス・グッドマン

 むしろ世界のエネルギー消費国は、今回のパニックから恩恵を得られそうだ。なにしろ中国は、世界最大の商品(原材料や農産物)消費国だ。その成長減速で猛烈な商品需要も鈍化したことが、この夏の原油価格下落の大きな理由の1つだった。

 ドル高も、原油価格の下げ圧力となった。世界の石油取引はドル建てがほとんどだから、通貨安となった産油国は生産量を増やし、供給過剰に拍車を掛けている。このため原油価格は8月24日、1バレル=38.24ドルという6年半ぶりの安値を付けた。

「米経済にとって、これは刺激になる。原油の8割は運輸関連に回されるからだ」と、キルダフは言う。そして輸送コストが低下している空運、海運、陸運企業の株価が上昇するとの見方を示した。

 キルダフに言わせれば、多くの投資家やエコノミストは、原油安のもう1つのプラス効果を見逃している。消費者信頼感の回復だ。「その最大の原因は商品、とりわけ原油の価格安とドル高だ」と、金融大手クレディ・スイスのアナリストらは指摘する。「こうした市場動向は、中国の成長減速とアメリカの景気拡大と密接に関係している」

 さらに価格下落を受け、原油の需要は世界的に拡大する見通しだ。しかも過去5年間で最大という、「トレンドを上回る」拡大が来年まで続くと、国際エネルギー機関(IEA)は予測する。IEAによると、今年の需要増は日量で170万バレル、来年は140万バレルになる。

 例えばアメリカでは、石油製品の需要が何年かぶりの高い水準にある。ガソリンをがぶがぶ食うSUV(スポーツユーティリティー車)やトラックの販売も絶好調だ。調査会社オートデータによると、自動車メーカー各社の、夏のドライブシーズンの販売台数は予想をほぼ2倍上回り、年間ベースでも過去10年で最大となる可能性が出てきた。

「(原油価格の)下落を受け、(石油製品の)需要が高まっている」と、エネルギーアナリストのジム・リターブッシュは語る。また、これまで消費を控えてきた分、消費者は車を買うだけでなく、走行距離も増やすだろう。「ガソリンは需要と供給量が一致しやすい」

減産を拒否するOPEC

 だが、原油は違う。需要は高まっているが、世界的にだぶついた供給をとても吸収できそうにないのだ。IEAによると、アメリカのシェール革命を背景とする生産量増加で、原油の過剰供給は日量300万バレルという98年以来の「驚愕すべき」高水準に達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金価格が一時2%超下落、ドル高・米利下げ期待後退で

ビジネス

アングル:日本株「底打ち」サイン、一部データが示唆

ワールド

韓国国会特別委、対米3500億ドル投資法案承認 本

ビジネス

街角景気、2月は4カ月ぶり改善 前月比1.3ポイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 2
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 3
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリアルな街で考える60代後半の生き方
  • 4
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    最後のプリンスが「復活」する日
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中