VW:車のソフト依存が不正の温床に
こうした懸念を踏まえ、デジタル時代のプライバシー保護に取り組むNPOのエレクトロニック・フロンティア財団は自動車に関して、DMCAの適用に2つの例外を求めてきた。
1つは、セキュリティー専門家が車載ソフトウエアの脆弱性を調べられるようにすること。もう1つは、車の所有者に自分の車の改造や修理の権利を認めることだ。
だがVWの北米部門も加盟する業界団体オート・アライアンスは、どちらの要望にも反対を表明。ユーザーの安全を守るためには制御ソフトの「ブラックボックス化」が不可欠だと主張している。
彼らはさらに、EPAを味方に付けることにも成功した。誰かが勝手に「ブラックボックス」を開け、「排ガスは増えるが走行性能は上がる」設定に変更できるようになったら、環境規制の有効性が損なわれると、EPAは訴えている。
つまり、どこかの個人が自宅のガレージで愛車を改造するリスクを回避するためなら、世界有数の自動車メーカーによる1100万台の「改造」を見抜けない事態もやむを得ない、というわけだ。
VWによる不正を何年も見抜けなかったEPAが、ブラックボックスを開けるべきタイミングを理解していないのは明白だ。だとしたら、他の誰かが内部をのぞき込まない限り、車の心臓部にどんな悪魔が潜んでいるか永遠に分からない。
© 2015, Slate
[2015年10月13日号掲載]