最新記事

自動車

VW:車のソフト依存が不正の温床に

2015年10月8日(木)18時00分
ジェームズ・グリンメルマン

 州の排ガス基準をクリアできなければ、州内での登録は認められない。カリフォルニア州のような環境規制の厳しい州では今後、リコール対象となったVW車の登録更新が難しくなるかもしれない。

 未来の車は、いわば「車輪付きのコンピューター」だ。米アップルまでもが独自の車の開発に乗り出すなか、既存の自動車メーカーは競って車のコンピューター化を進めている。

 各社が開発にしのぎを削る「自動運転車」では、運転手もソフトウエアに取って代わられることになる。ただし、ソフトウエアには常にバグやハッキング被害、クラッシュの危険が付きまとう。ソフトウエアがクラッシュすれば、車もクラッシュ(衝突)する。

 その点、米テスラモーターズの電気自動車は未来を先取りしている。同社の車はネットに常時接続されており、スマートフォンのアプリと同様に定期的にソフトが自動更新される。瓦礫を踏んだ際に車のバッテリーパックにへこみができたという報告を受けて、ソフトウエアをアップデートし、サスペンションを路面から離すよう設定が変更されたケースもある。

 VWも、同様の方法でソフトウエアに修正を加えることは可能かもしれない。それどころか、自動車ローンの返済が滞っている車を動けなくすることも技術的には可能だ。

 ハッカーが遠隔操作によって高速道路を走行中の車のエンジンを停止させるというシナリオは、既に現実のものとなっている。車載ソフトをアップデートすべき重要な理由の1つは、そうしたセキュリティー上の脆弱性に対処することだ。

著作権法が意外な壁に

 だが、セキュリティー専門家の行く手を阻む壁がある。意外や意外、著作権法である。

 アメリカで00年に施行された「デジタルミレニアム著作権法(DMCA)」には、デジタルメディアのコピーを防ぐ管理ソフトの無効化を禁じる条項がある。だが、もともと映画DVDや音楽CDの海賊版の製作・配布を防ぐために設けられたこの条項が想定外の目的のために利用され、セキュリティー専門家の足を引っ張っている。ハイテク家電などのメーカー各社が、自社製品に搭載したソフトウエアは著作権で保護されていると主張し、専門家からの外部チェックを妨害しているのだ。

 実際には、専門家によるソフトウエアのチェックは全米すべての州で合法とされている。それでもメーカー各社は、DMCAを盾に管理ソフトへの外部からのアクセスを拒み、人々が日々使う機器の脆弱性が露呈しないようにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 10
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中