世界株安の混乱、背後に中国証券規制当局の「頭脳流出」
香港で外資系銀行に勤めるトレーダーは「過去数年と同じレベルの専門知識が保たれていない」とし、それゆえに、「悪意ある」空売りの規制など見当違いの政策につながったと指摘する。
CSRCと定期的にやり取りする大手ファンドの幹部は「彼らが賢くないというわけではない。金融の専門知識がないのだ」と語った。
現在もCSRCに残っている人物によれば、規制当局は、信用取引向け融資残高の急増が意味するところを十分に把握できていなかった。
不信の連鎖
こうした失態は、中国政府の信用を失墜させた。
中国政府は株価の下支え策に9000億元(約16兆8000億円)をつぎ込んだが、主要株価指数は急落が一服した後、再び下げ基調に戻っている。株式時価総額はドイツの国内総生産(GDP)を上回る4.5兆ドル(540兆円)以上が吹き飛んだ格好だ。
株式市場への当局の強引な介入は、中国が公約した金融改革に対する信頼も傷つけた。
中国に帰ってきた金融機関の「精鋭」たちは、自分たちが政策に影響を与えられないことへの不満や、昇進の機会が制限されていること、薄給を理由に規制当局を去って行った。同僚からの恨み節も聞こえていたという。
上海にある国際ビジネススクール、中欧国際工商学院(CEIBS)のオリバー・ルイ氏は「彼らは外に出れば、よりローリスク・ハイリターンで高い収入を得られる。(出て行くのは)無理もない」と語った。
(原文:Samuel Shen and Engen Tham、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)