最新記事

ヨーロッパ

パリ観光業を襲うテロの「風評被害」

風刺週刊紙の襲撃事件を機に、旅行者だけでなくビジネス客も激減

2015年2月23日(月)18時08分
ダミアン・シャルコフ

厳しい冬 観光名所も有名レストランも活気を失っている Thierry Levenq-Momen/Getty Images

 フランスの風刺週刊紙シャルリ・エブド襲撃事件が大きな傷を残した場所がある。パリの観光産業だ。

 パリのホテル・レストラン協同組合SYNHORCATは1月、会員の観光・サービス業400店を対象に行った調査結果を公表した。事件後にフランス国内で発生したホテルの宿泊予約キャンセルの80%が、パリのホテルに集中していたという。高級ホテルほどキャンセル数が多く、5つ星ホテルの先月の予約取り消しは平均60%超に上っている。

 特徴的なのは、観光客以上にビジネス客が激減していること。エグゼクティブや接待向けの有名レストランや高級バーのキャンセルは68%に達している。

 カジュアルなバーやブラッスリー、カフェなどでも、客足は落ち込んでいる。来店者は3割減、収入も11%低下している。

 それでも、調査対象のレストランオーナーの2人に1人が、来店者数と売り上げの減少は一時的なものだと思うと回答。その一方で、レストランやカフェ、バーの支配人の78%は、店で飲食する客が目に見えて「活気を失っている」と答えている。

打撃が深刻なイスラム諸国とアメリカ

 事件後にパリの観光客が激減したことを示す調査結果は、以前から複数報告されていた。さらに事態は改善するどころか、徐々に深刻化しているようだ。

 フランスの保守系週刊誌レクスプレスは1月、パリのホテルでは毎週末ごとにキャンセル数が前週より増加し、収入は日々落ち込んでいると報道した。襲撃の9日後に25%減少したパリの観光収入は、10日後には26%減に悪化したという。

 観光コンサルタントのジョルジュ・パナヨティスによれば、特に影響を受けているのはイスラム諸国とアメリカからの客だ。イスラム諸国の人々は反イスラム感情の高まりを恐れてパリ行きを避け、アメリカの旅行者は米メディアのセンセーショナルな報道にあおられていると、彼は指摘している。

 パリのイダルゴ市長は2月半ば、米FOXニュースを名誉毀損で告訴すると発表。パリに非イスラム教徒が近づけない危険な「立ち入り禁止地区」が8カ所存在し、警察も寄り付けない状況だと報道されたためだ。

 観光の街パリの風評被害は、日に日に深刻化している。

[2015年2月24日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中