フェイスブックに友達を売ってない?
「友達を探し出す」機能は確かに便利だが、友人の電話番号やメールアドレスが運営企業の手に渡り、悪用される恐れも
皮肉な結果 フェイスブックはサービスのためにやったことが、顧客情報の悪用と紙一重に Fanatic Studio/Getty Images
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に登録するとたいてい、「友達を探す」機能を使うかと尋ねられる。アドレス帳の中から、既にそのSNSに登録している人をリストアップしてくれる──実に便利な機能に思える。氏名やメールアドレスを一人ずつ入力して検索するのはひと苦労だ。
そこで、あなたは「イエス」のボタンをクリックする。そして、表示されたユーザーの中からSNS上でつながりたい人を選択する。これで、その相手に友達申請が送られる。
実はこの過程で、あなたはアドレス帳の中の友人や同僚のメールアドレスと電話番号の情報をSNSの内部データベースにごっそり贈呈したことになる。運がよければ、SNSの社員は、あなたより慎重に友人たちの個人情報を扱ってくれるだろう。
しかし残念ながら、そういうケースばかりではない。朝の6時に上司から義理の母親に至るまで、アドレス帳に載っていた全員に携帯メールを送り付けるかもしれない。
あるいは、アドレス帳の情報を自社の内部データベースと照合し、既に登録している友人がそのSNSに教えずにいた電話番号やメールアドレスを割り出し、データベースに追加する可能性もある。
もっとひどい場合は、そのSNS上で友人とつながっている全ユーザーに、その友人の秘密の電話番号やメールアドレスが知られてしまう状況をつくり出しかねない。
これは、この1年間フェイスブックで起きていたことだ。意図的な漏洩ではなかったが、システムの不具合により、「ダウンロード・ユア・インフォメーション」機能を通じて約600万人の連絡先がほかのユーザーに知られる可能性があった。
6月にセキュリティー情報サイトの「パケットストーム」がこの問題を指摘。フェイスブックは謝罪し、不具合を修正した。
本人には削除要求権なし
グーグルやフェイスブック、アマゾンといったオンライン企業に登録した個人情報が100%安全だとは、今や誰も思っていないだろう。だが、友人や同僚があなたの個人情報をSNSに登録しているとは、あまり気付いていないのではないか。
SNS界では、そのようにして記録された個人情報を「シャドウ・プロファイル」と呼ぶ。シャドウ・プロファイルに関しては不条理な点がある。もし、あなたが自分の同意なしに電話番号やメールアドレスがフェイスブックのシャドウ・プロファイルに登録されていることを知っても、あなたにはそれをどうすることもできない。
あなたが電話番号やメールアドレスを友人に教え、友人がそれを自分のアドレス帳に記せば、それはその友人の個人情報だ。そして、友人がアドレス帳へのアクセスをフェイスブックに許せばその情報はフェイスブックのものになる。あなたが削除を求めても、フェイスブックは応じない。あなたの情報でない以上、あなたには削除を要求する権利がないからだ。
フェイスブックは、個人情報を盗むためにこういう仕組みをつくったわけではない。ユーザーへのサービスのつもりだ。実際、このシステムがあるおかげで、友人同士がフェイスブック上でお互いを探しやすくなっていることは間違いない。