フェイスブックに友達を売ってない?
シャドウ・プロファイルの問題は、11年にアイルランド政府がフェイスブックを調査した際、プライバシー侵害を疑った点の1つだった。だが結局、アイルランド政府はこれを不問にした。
それは、フェイスブックが情報を悪用していないと見なしたからだ。電話番号やメールアドレスを使って広告を送り付けたり、その情報を第三者に売ったり、(6月に発覚した情報漏洩が起きるまでは)サイト上で第三者が見られるようにはしていなかった。標榜しているとおり、友人を探す手助けをするためにしか用いていなかった。
うっかりすると友達を減らしかねない
しかしパケットストームは、収集されたデータがハッカーや政府の監視活動の標的にされる危険性を指摘している。
フェイスブックに言わせれば、「友達を探す」機能を利用する際にフェイスブックにアドレス帳へのアクセスを許可するユーザーは、それが何を意味するか納得しているはずだという。
ただオンライン・プライバシー企業アバインのアナリスト、セーラ・ダウニーは、そうは思わない。「友達を探すためにこの機能を使っているという意識はあっても、自分の友達に関するデータベースを築くのに手を貸しているつもりはない」
小さなSNSやアプリはフェイスブックよりはるかに不用意に、ユーザーのアドレス帳から得た情報を扱っている。多くの企業は、フェイスブックより脆弱なセキュリティー体制しか取っていない。
例えば新興SNSの「パス」は、ユーザーのアドレス帳に載っている人たちへの入会勧誘にかけては、フェイスブックよりはるかに積極的だった(批判を受けて方針を変更した)。
ユーザーが誰と知り合いで、誰とつながりたいと思っているかを探り出す能力を最も磨き上げているSNSは、リンクトインだろう。
会員に明示している以外の目的で個人情報を利用することがないよう注意を払っていると、同社のプロダクトマネジャー、ブラッド・モーニーは言う。「隠し事は何一つない」。ユーザーの信頼を裏切らないことは、同社のビジネスに欠かせない要素というわけだ。だが、リンクトインが考える「誠実」の定義がユーザーの考えと同じという保証はない。
ほとんどの人はオンライン企業に保有されている自分の秘密情報の中で、シャドウ・プロファイルの重要性を恥ずかしい写真、私的なメッセージ、クレジットカードの番号より低く考えているだろう。しかしフェイスブックでさえ、SNS(フェイスブックも含めて)にアドレス帳を差し出す前に冷静に考えたほうがいいと言っている。
友人を探し出してくれる機能は確かに便利だ。しかしそれと引き換えに、営利企業に友人の情報を提供していると、現実世界で友人を減らしかねない。
© 2013, Slate
[2013年8月 6日号掲載]