最新記事

航空

アメリカ「格安航空時代」は終わった

USエアウェイズとアメリカン航空の合併で再び大手航空会社の時代へ逆戻り

2013年3月4日(月)16時31分
マシュー・イグレシアス

冬の時代へ これからアメリカでは航空運賃が値上がりし、サービスは低下するだろう Mike Theiler-Reuters

 安価な運賃で空の旅を楽しんできた者に受難の時代が訪れた。原因は、先日発表されたUSエアウェイズとアメリカン航空の合併だ。既にノースウエスト航空はデルタ航空に、コンチネンタルはユナイテッドに、エアトランはサウスウエストに買収されており、これで近い将来、4大航空会社がアメリカ市場の約70%を占めることになる。

 これが独占とまでは言わないが、30年以上にわたって熾烈な競争が繰り広げられ、常に運賃が下げられてきた時代はこれでほぼ終わったと言っていい。

 かつては運賃が米民間航空委員会によって定められ、各社が利益を得られる仕組みになっていた。だが70年代後半から80年代前半にかけて、カーターとレーガン政権下で行われた規制緩和によってすべてが変わった。

 新規参入組が次々と現れ、従来の航空会社の既得権益を脅かし始めた。サウスウエスト航空のように州間の路線を拡大し、全米展開する航空会社が現れると、運賃は下がり便数も増えた。

 利用者にとっては黄金時代だったが、航空会社にとっては価格とサービス競争に追われた時代。結局、どこの会社も赤字に苦しむようになり、現在のような業界再編に至った。

経営破綻は氷山の一角

 今回の合併で発表された主な目標は、国内路線の「無駄を削減」すること。平たく言えば、競争とサービスを減らすことだ。乗客に我慢を強いることで収入を上げようとする合併はひどい話に聞こえる。

 だが現実は、アメリカン航空の経営破綻だけにとどまらず航空業界全体が苦境に陥っている状態だ。それに、利用客はこれまで身に余るぐらいのサービスや低料金の恩恵を受けてきたではないか。

 今回の合併は悪い話に聞こえるかもしれない。だがもっと最悪なのは、これよりいい代替案がないという苦い現実だ。

© 2013, Slate

[2013年3月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中