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アップルiPadミニの強気価格は裏目に出る?
その気になればキンドル並みに安くもできたはずだが、高価格のままクリスマス完売を目指す
待望の7インチ 新発売のiPadミニの価格は、予想を上回っていた Robert Galbraith-Reuters
アップルが期待の小型・軽量タブレッド端末「iPadミニ」の価格を329ドルと発表した10月23日、英フィナンシャル・タイムズは「iPadミニの価格設定を投資家が懸念」と題した記事を掲載した。なんとも奇妙なタイトルだ。
329ドルという価格設定は事前に予想されたよりやや高めだったから、一消費者の立場で言えば、もちろんもっと安いに越したことはない。だが一方で、私はアップル社の株式19株を所有する株主でもある。株主の視点で見れば、高めの価格設定は悪い話ではないはず。なのになぜ、懸念を感じる必要があるのだろう?
iPadミニと同時に発表された、高精細なレティーナディスプレイ採用の「第4世代iPad」を見ると、そのからくりがわかる。調査会社iSuppliによれば、第4世代iPadの最下位モデルの製造コストは316ドル。つまり、理屈上はiPadミニと同じ329ドルでも、利益を出せる計算になる。
だが、アップルはこの最下位モデルの小売価格を490ドルとした。なぜか。仮に新型iPadが329ドルという劇的な低価格で手に入れば、消費者は大喜びだろう。だが投資家にとっては、大きな懸念材料となる。グーグルやアマゾンとの競争が激化し、アップルの利幅が食われていることを明確に示唆するサインとなるからだ。
アップルが「アマゾン」になる日
iPadミニの割高な価格設定は、そんな「利幅縮小」シナリオとは正反対の動きだ。アップル流の大きな利幅を維持できる強気の価格設定をしても、今年のクリスマス商戦でiPadミニをほぼ完売できる、という自信の表れだからだ。
もっとも、それは根拠のない自信に過ぎず、多くの在庫が残る可能性もある。小型のタブレット市場で勝つ唯一の方法はアマゾンの電子書籍端末キンドルのように、ほとんど利益が出ない低価格路線なのかもしれない。
iSuppliのデータによれば、第4世代iPadの最下位モデルの利幅は37%。iPadミニの329ドルという小売価格にも同じ37%の利幅が含まれていると仮定すれば、原価は207ドルだ。アマゾンの「キンドル・ファイアHD(広告なしバージョン)」の小売価格が214ドルだから、アップルが本気でアマゾンに対抗したければ、iPadミニを207ドルで売り出すこともおそらくは可能だろう。
だが、そんなことが現実になれば、アップルの株主にとっては悪夢だ。アップルがアマゾンのように利幅の小さい企業に変わってしまうのだから。
しかも、その悪夢はいつか現実になる可能性が高い。アップルがいつまでも従来のような大きな利幅を守るのは難しいだろう。iPadミニに付けられた329ドルの値札は、アップルが今も従来路線を貫けると信じていることの証だが。
© 2012, Slate