Huluのサービス大放出は限界
放送から1日待てばほとんどの番組が無料で見放題だった動画配信サービスが、サービス改悪に着手したが
うまみ減 有料版のHuluプラスが登場した裏には業界のさまざまな思惑が渦巻く Scott Eells-Bloomberg/Getty Images
映画やテレビ番組が見放題の動画配信サービスHuluは、ユーザーにとってあまりにおいしい(日本では月額980円だが、アメリカでは無料)。最近少しうまみが減ったが、今のところまだまだ十分おいしい。
ネット局とケーブル局のおびただしい数の番組を、無料で高解像度で、おまけに好きなときに見られるのだ。テレビよりはるかに魅力がある。ただし問題は、これからHuluがどうサービスを改悪するつもりかということだ。
私はケーブルテレビに加入したことがない。年1000ドルほどの料金がばからしいと思うからだ。しかし仮に加入したとしても、08年にHuluが登場したときに間違いなく解約していただろう。Huluなら放送から1日待ちさえすれば、ケーブル局のほとんどの番組を無料で、どこででも見られる。
ケーブルテレビには大きな欠点が3つある。面白い番組がなくてだらだらチャンネルを替え続ける、見たい番組が重なって家族げんかが起こる、基本プログラムにばか高い料金を取られる。この3つは、Huluを使えばすべて解決する。
しかし、これでは利用者に甘い汁を吸わせ過ぎだと、どうやらHuluは気付いたらしい。
これがフェイスブックやYouTubeやアマゾンのような新興企業なら、市場を制するまで最高のサービスを続ければいい。それから上場して、ぼろ儲けの方法を考える。
だが、Huluは新興企業ではない。NBCとニューズ・コーポレーション(FOXテレビの親会社)、ディズニー(ABCの親会社)、それに非公開投資会社を株主とする既存のメディア企業だ。なのに、新興企業のふりをしてメディアビジネスの古いモデルを守ってきた。
だから、お楽しみは続かない。良過ぎるサービスを早くやめなくてはならない。そうでないと、親会社にしわ寄せが及ぶ。
そこでHuluはサービス改悪に着手した。既に10年には、会員制有料サービス「Huluプラス」を導入している。
噂される次のステップ
もともと「プラス」はHuluにはないサービスだけを提供していた。視聴できる人気番組の過去のシリーズを増やしたり、スマートフォンやブルーレイ、ビデオゲーム機での使い勝手を向上させたりした。
だが今年になって、HuluプラスはこれまでHuluが無料でやってきたサービスに入り込み始めた。『Glee グリー』などのFOXの番組を翌日見られるのは、月7.99ドルを払うプラス会員だけになり、古いHuluのユーザーは8日後まで待たなくてはならなくなった。
噂によれば、今後はHuluユーザーから「認証」を求めるネット局が増えるという。例えばABCのドラマ『モダン・ファミリー』を見るには、まずログインして、ケーブルか衛星放送サービスの有料会員であることを証明しなくてはならなくなるという。狙いは、増え続けるケーブル解約者にHuluの親会社の番組を無料では見せないようにすることだ。
これは実にろくでもないアイデアで、人をばかにしている。今まで『モダン・ファミリー』のようなドラマは、テレビとアンテナがあれば誰でも無料で当日に視聴できたのだから。