最新記事

テクノロジー

マイクロソフトが挑む医療大革命

ソフトウエア開発で医療サービスのオンライン共有を実現できるか

2010年8月24日(火)14時46分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

 医療サービスの改革問題は、考えれば考えるほど絶望的な気分になる。しかし絶望的だからこそ、IT実業家のピーター・ニューパート(54)は奮い立った。

 「とてつもない難題だ」と、ニューパートは言う。「妻からはいつも『もっと簡単にできる仕事はたくさんあるのに』と言われる。しかし、私には難題に挑戦したがる遺伝子が組み込まれているんだ」

 マイクロソフトの重役からオンライン薬局ドラッグストア・ドットコムのCEO(最高経営責任者)に転身して大金持ちになったニューパートは05年、医療機関向けソフトウエア開発のため古巣に戻った。現在はマイクロソフト傘下のヘルス・ソリューションズ・グループで800人の従業員を動かし、全米の病院と取引している。

 簡単に説明すると、ニューパートの改革案は最新のソフトウエアで医療システムを効率化し、患者に低コストでより良いサービスを提供するというもの。幼い子供のいる親や、頻繁に病院に通う世代にとってこうした改革はありがたい試みだが、現実には医療記録の管理はまだ煩雑で、ようやくデジタル化が始まったばかりだ。

 7000曲の音楽データは簡単に管理できて、なぜ子供の予防接種の記録が把握できないのか。銀行の取引も旅行の手配もオンラインで済むのに、病院の事務処理は50年前と変わらない。情報がデジタル化されていても、病院間でデータを共有する例は多くない。

 けがをして救急治療室に運ばれた患者に、医者は「破傷風の予防接種はいつ受けましたか?」と聞く。しかし、大抵は覚えていないし、調べる方法も分からない。これはまだ単純な例だ。

 もし救急患者が糖尿病を患っていて、複数の医師や栄養士や療法士にかかっていたら? 医師も療法士もカルテは付けているが、そのデータを共有していない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国家主席、「外部の干渉」に抵抗呼びかけ 上海協

ワールド

中印外相、国境問題の早期解決で合意 対話強化へ

ビジネス

中国BYD、タイに東南ア初のEV工場を開設 「技術

ビジネス

ホンダ、損保大手や大手銀など10社が株式売却 約5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVの実力
特集:中国EVの実力
2024年7月 9日号(7/ 2発売)

欧米の包囲網と販売減速に直面した「進撃の中華EV」のリアルな現在地

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 2
    黒海艦隊撃破の拠点になったズミイヌイ島(スネークアイランド)奪還の映像をウクライナが公開
  • 3
    キャサリン妃も着用したティアラをソフィー妃も...「ロータス・フラワー・ティアラ」の由緒正しい歴史とは?
  • 4
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 5
    現在のビットコイン価格は「高すぎ」か、実は「割安…
  • 6
    ありなの? 飛行機の隣席に40kgの大型犬アメリカン…
  • 7
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 8
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 9
    爆風で窓が吹き飛ぶ衝撃シーンを記録....「巨大な黒…
  • 10
    H3ロケット3号機打ち上げ成功、「だいち4号」にかか…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「帰ってきた白の王妃」とは?
  • 3
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 4
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 5
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 6
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 7
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 8
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 9
    黒海艦隊撃破の拠点になったズミイヌイ島(スネーク…
  • 10
    H3ロケット3号機打ち上げ成功、「だいち4号」にかか…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 5
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 6
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 7
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 8
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 9
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 10
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中