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電子書籍「iPadで読書が遅くなる」は怪しい
電子端末で本を読むと、普通に本を読むよりスピードが遅くなるという衝撃的な調査結果が発表されたが
私はiPadのようなタブレット型端末で読書をするのが嫌いではないが、昔ながらの本のほうがもっと好きだ(iPadのスクリーンに反射する自分の顔が目についてちょっと気持ち悪いから)。
とはいえ、電子書籍リーダーで読書をすると普通に本を読むより速度が遅くなる、という調査結果は信用できない。まず公平な競争ではない。私たちは生涯本を読んできて、電子書籍を読み始めたのはごく最近だ。端末の種類が変わると使い勝手が違うので、そのために速度が落ちることもあるだろう。
さらにこの調査を行ったのは、iPadの使い易さについて話題性はあるが内容的にはやはり疑わしい調査結果を発表したのと同じニールセン・ノーマン・グループだ。いや、今回の調査のほうがもっと拙速に見える。調査対象は「よく読書をする」ユーザー24人だけ。彼らがどの程度iPadやキンドルを使い慣れているのかもはっきりしない。
何しろ、調査の結果は以下の通りだ。
iPadでは、読書スピードが普通の本より6.2%遅くなる。キンドルでは10.7%遅くなる。ただし、両端末の差については結果が様々で、統計的に有意とはいえない。
従って、どの端末を使うといちばん読書のスピードが上がるのか確かなことはいえない。いずれにしても大した差ではないので、どの端末を買っても同じことだろう。
自らの調査結果があやふやだということをゴシック体で強調する誠意には敬意を払わなければなるまい。最後にこの調査は、半ば投げやりに結論づける。「iPadで本を読むと、普通に本を読むより『いくらか』速度が遅くなる」と。そんな重箱の隅をつつくような違いでは、iPadやキンドルでは普通の本より読書が遅くなるという証拠にはならない。