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債務危機第2のドバイは欧州のあの国?
ドバイ・ショックで新興諸国のリスクを再評価した投資家が次に逃げ出す市場
11月末、ドバイ政府が政府系企業と系列会社の債務繰り延べを要請すると発表したのを受けて、投資家はアブダビやクウェートなど近隣市場から資金を引き揚げた。しかし騒ぎが収まるにつれ、第2のドバイになるのは中東の富裕国ではないことが明らかになりつつある。危ないのはむしろ、重い債務を抱えるヨーロッパの国々だ。
ブルガリアやハンガリー、バルト諸国はGDPを超える膨大な対外債務に苦しんでいる。公的債務不履行に陥る可能性は低いが(過去10年間ではエクアドルとアルゼンチンのみ)、政府と政府系企業が債務返済を続けられるかどうか、ますます怪しくなっている。
米債券運用会社ピムコのモハメド・エラリアンCEOによれば、政府のバランスシートの赤信号(短期借入金の多さ、税収不足、流動性の欠如)からすると、次に危ないのは中欧や東欧だ。「ついこの間までは大量の流動資金が投入され、多くの根本的なリスクが目立たなくなっていた」と、エラリアンは言う。「それでも、昨年の危機の影響は残っている」
世界金融危機の最終章が始まる
今年、新興市場は好調だが、ドバイ・ショックを機に世界金融危機の最終章が始まるかもしれない。昨秋のパニックによる打撃からまだ立ち直り切れていない市場からの「集団脱出」という形で。
その兆候の1つとして、政府や政府系機関が発行するソブリン債の保証コストが上昇している。特に東欧では昨年以降、急上昇。ラトビアでは5・3%と、現在のドバイに迫る勢いだ。
以前は堅調だったギリシャやアイルランド、ポルトガルの経済も、東欧の経済と変わらないという見方が増えている。ギリシャは今後1年間に470億ユーロの借り入れが必要だ。既に公的債務がGDP比135%を超え、今年の財政赤字は12・7%とユーロ圏最大であることを考えれば、これは至難の業かもしれない。アイルランドは対外債務がGDP比800%を超え、さらに深刻な状況だ。
ほんの数カ月前までは景気回復で手っ取り早く儲けようという投資家のおかげで、これらの国は好調に見えた。しかしドバイの債務危機で、こうした国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)のお粗末さが露呈した。過去の信用収縮では不動産、金融機関、消費者が打撃を受けた。今度は政府の番かもしれない。
[2009年12月16日号掲載]