Xマス商戦の速報データは無意味
いま相次いで発表されているクリスマス商戦の数字が経済の先行きを教えてくれない理由
運命の日? 11月27日の金曜日にアメリカの小売業界はクリスマスシーズンに突入 Shannon Stapleton-Reuters
アメリカのすべての経済活動の70%を占めるのは個人消費。その個人消費の動向を探る上で重要な手掛かりとされてきたのがクリスマス商戦だ。
09年冬のクリスマス商戦に関するデータは、既にタイガー・ウッズの愛人情報も顔負けなくらい猛烈な勢いで飛び交っている。問題は、情報の満足度もウッズの不倫報道レベルだということだ。ひっきりなしに最新情報が飛び込んでくるが、状況を正確に把握する役にはほとんど立たない。
国際ショッピングセンター協会の予測によれば、アメリカのクリスマス商戦の売り上げは前年比で1〜2%増加するという。同協会の実施した調査によれば、消費者は前年よりプレゼント購入のための支出を増やすつもりらしい。
その半面、これまでに入ってきている数字は悲惨だ。調査会社ショッパー・トラックによると、クリスマス商戦の幕開けを告げる「ブラック・フライデー」(11月末の感謝祭の祝日明けの金曜日)の売り上げは、前年比で0.5%しか伸びていない。
スタートがいいと後が怖い?
全米小売業協会によれば、感謝祭直後の週末に買い物をした人は前年より増えた。お店やオンラインショッピングサイトを訪れた人の数は1億9500万人に上った(08年は1億7200万人)。しかし実際に使った金額は、08年の平均327.57ドルから343.31ドルへと7.9%落ち込んだ。
もっとも、上々の数字を叩き出している業界もある。マスターカードの調査部門によれば、11月の家電の売り上げは前年比で6.6%増加したという。
これでは頭が混乱しても無理はない。しかも、この種のデータは互いに食い違っているだけでなく、そもそも不完全だ。この種の調査結果の多くは、網羅的な統計というより断片的な調査に過ぎない。
それに、マラソンの最初の3キロのタイムをもとに最終的な成績を予測するのには無理がある。ウォールストリート・ジャーナル紙も指摘しているように、マスターカードの調査部門によれば08年の感謝祭直後の週末の売り上げは前年比1%減だったが、終わってみればクリスマスシーズン全体の売り上げは6.3%も下落した。
もし消費者が買い物をする時期を早めているだけだとすれば、シーズンのスタートダッシュがよくても朗報とは限らない。実際、国際ショッピングセンター協会の調べによれば、回答者の16%がブラック・フライデーに買い物を始めると述べており、この数字は08年の10%より6ポイント高い。
ネット通販「好調」のカラクリ
オンラインショッピングの売り上げ増も額面どおりには受け取れない。経済成長が停滞しているこの時期に、売り上げが5%前後伸びたと聞けば感心する人も多いかもしれない。
しかし、別に感心するようなことではない。長い目で見て、小売市場に占めるオンラインショッピングの相対的な比率が上昇し続けていることを考えれば、感謝祭明けの最初の月曜日(「サイバー・マンデー」と呼ばれる)の売り上げが年々増えるのは当たり前だ。
いや、今年はそれもおぼつかないかもしれない。サイバー・マンデーにオンラインショッピングの売り上げが伸びるのは、職場でインターネットにアクセスして買い物をする人が多いからだと、一般に言われている。しかし今年は、昨年に比べて「職場」のある人がかなり減っている。
データの問題点はまだほかにもある。来客数や売り上げが伸びたとしても、それが出血大サービスおかげだとすれば、業者の利益は見掛けほど多くない。