世界中の株価急騰4つの理由
悲観論に逆らう強気相場を読み解く──株価はまだ20%上がる
世界中で株式市場が急上昇している。景気はここ半世紀で最悪の落ち込みを見せ、崩壊した金融システムは数十億謖の自己資本を必要としている。各国で新型インフルエンザが猛威を振るい、住宅価格は下落し続けている。そんな状況のなかで株価が急騰している。
4月30日付のニューヨーク・タイムズの1面には、「50年代後半以来、最速で落ち込む経済」という見出しが躍った。同じ日、ペール・シュタインブリュック独財務相はドイツが「第二次大戦以来最悪の不況」に陥るだろうと発言し、他のヨーロッパ諸国もかなり厳しい状況にあると語った。
日本、韓国、シンガポールといったアジア圏では、経済の低迷はさらに深刻だ。専門家の大半は中国が発表する経済指標の数値を懐疑的に見ている。
投資界の「賢人」や有力な経済学者は、悲観的な予測と長期にわたる富の破壊を唱えている。そうした状況の下で、なぜ株式市場が上昇しているのか。
第1に、現在われわれが目にしている数字はすでに古い。米政府は4月29日、09年1~3月期の実質GDP(国内総生産)が年率換算で前期比マイナス6・1%となったと発表した(前期の08年10~12月期はマイナス6・3%)。半年間の下落幅で見ると、過去50年間で最悪となる。
それでも同日、ニューヨーク株式市場は約2カ月半ぶりの高値を記録。なぜか。それは3月中旬から、ベン・バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長が言うところの実体経済の「若い芽」が見え始めていたからだ。その頃から一部の投資家は、世界経済の低迷が底を打ったと考え始めていた。
今では「若い芽」は葉を茂らせつつある。この数週間でアメリカ、ドイツ、そしてアジアの経済は底を打ったばかりか、リバウンド寸前の状態に見える。今年後半かそれ以前に、実質GDP成長率がプラスに転じる可能性もありそうだ。
巨額の現金が遊んでいる
新規受注指数や購買担当者景気指数(PMI)などの景気先行指数は上昇している。
歴史的にみるとGDPの下落が急なほど、リバウンドの勢いは強い。著名エコノミストのエドワード・ハイマンは、09年7~9月期の実質GDP成長率は4%近くになると予測している。
株価急騰の第2の理由は、メディアが報じる暗いニュースの大半が、既に株価に織り込まれているから。株式市場は過去ではなく将来を見据えるものだ。今回の市場低迷が始まったのは07年夏だが、当時はまだ世界が好景気に沸いているように見えた。
第3の理由は、類を見ないほど巨額の現金が投資されずに遊んでいること。マネー・マーケット・ファンド(MMF)の現金はアメリカ株式市場の時価総額の40%という記録的な額に達している。
機関投資家はここ数週間で少し強気になったものの、まだ極めて悲観的だ。数十年間、大手年金基金などの機関投資家は保有株式の株価が予定より上がったら自動的に売り、最低ラインを下回ったら買うという手法で投資を続けてきたが、このところは自動売買を停止している。
だが株価は25%も上昇し、取引開始の圧力は高まっている。じきに彼らは買いに動くだろう。
株式市場上昇の第4の理由は、信用市場と金融市場が劇的に改善したこと。優良な社債からジャンク債(高利回り高リスク債券)まで、さまざまな債券の利回り格差が縮小し、一時は4・82%まで上昇した3カ月物銀行間貸出金利も1・02%に下がっている。