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アメリカ経済

米景気がついに底を打った

2009年7月15日(水)18時17分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

「雇用は年末までに改善する」

 だがアチュサンも、最も重要な指標の1つである雇用統計がまだ上向いていないことは認める。これは企業のレバレッジ解消(資産売却や債務返済)と製造業のかねてからの衰退が、新規雇用の創出を妨げ、既存の雇用を喪失させているためだ。

 前回の景気後退が01年に終わった後も、雇用者数は03年いっぱい減り続いた。これはサービス業で新規雇用が創出される一方で、製造業で何百万もの雇用が失われたせいだ。「今回の景気回復期にも同じような現象が見られるかもしれない」とアチュサンは言う。だが景気回復の流れを決めるのは雇用の伸びだけではない。

「雇用は非常に重要な指標だが(景気の波と)ほぼ一致して動く」と、アチュサンは言う。「だから雇用指標が景気の先行きを告げる指標と同じ動きをすることは期待していない」。

 ECRIは、雇用喪失数と失業保険申請件数は最悪の時期を超えたと見る。「われわれが正しければ景気後退局面は終わった。労働市場は年末までに改善するはずだ」

 もちろんだからといって90年代のように、幅広い雇用拡大による賃金上昇と企業福祉の拡充は期待できない。安易な借金や住宅ブームという追い風もない以上、何が大規模な雇用増を生み出すか予測するのは難しい(景気回復の初期はいつもそうだ)。

 ともかく景気は底打ちした。雇用なき景気回復を歓迎しようではないか!

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